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H&Mが投資するネット中古衣料売買代行のSellpyはどこまで伸びるか

2014年に設立されたSellpyはこれまでに1000万の中古品を販売した

家にある着なくなった服を詰めて送るだけで、その後の面倒な売買に関わるやり取りの一切をやってくれるサービスSellpy(セルピー)が伸びている。

2014年にスウェーデンで設立されたSellpyは2021年5月にそれまでスウェーデン、ドイツ、オランダ、オーストリアで提供されていた別々のプラットフォームを統合して、新たに20ヶ国の市場でも提供を開始。セカンドハンド品の売ると買うの両方でのサービスを提供して、急速に新たな顧客を獲得している。

Sellpyに服などを送ると、その後はその服の写真撮影からサイトへの登録、そして売り手がついた場合の商品の送付と売上の回収まで、面倒なことはすべてSellpyがやってくれる。

利用を申し込むとこんなSellpy袋が送られてきてあとは不要な服などを詰めて送るだけ

最新の2021年11月30日までの会計年度ではSellpyの売上高は4億300万クローナ(約53億円)とその前期の2億3200万クローナ(約30億円)と比較して急増した。一方で営業損失も3200万クローナから3690万クローナ(約4億8500万円)へと微増しており、Sellpyは設立から一度も黒字化していない。

Brekitの記事によると、このSellpyの筆頭株主はH&Mで78%を所有。H&Mはこれまでに合計3億クローナ程度(約40億円)の資金をSellpyに投入したと言われているが、Sellpyは詳細を明らかにしていない。ただ黒字化しない場合、ポーランドに大型倉庫を建設するなどアグレッシブな展開を続けるSellpyは、今後もさらなる資金の投入が必要になる。

経済紙のダーゲンス・インダストリ(DI)のサステナブル編集部が、Sellpyの倉庫のある本社に侵入取材をしていた動画が面白かった。DIは、数年前からタブロイド紙のExpressenがスクープし続けているSellpyの劣悪な労働環境(衣類からでるホコリや倉庫内の温度の問題や、カメラと音声による監視など)と、組合との間で労働協約を結んでいない件は最近どうなっているのかを質問していたが、労働環境は改善され続けており、労働協定についても現在はどの労働協定を結ぶかを検討する段階まできていると、Sellpyのスウェーデン市場の責任者は説明していた。

スウェーデンだけに限ると、Sellpyを使って家にある衣料品や小物を売るという習慣は根付いてきたものの、これからのSellpyの課題はセカンドハンド品をネットで買うという行動を定着させること。今後はここに注力していくとのことだったが、Sellpyの倉庫には今大量のセカンドハンド品が山積みになったまま、それほど売れていないということだろうか。

さて、私もSellpyのことは知っていたが、実はつい最近初めてSellpyでTシャツやセーターなど何点か買ってみたばかり。買ったらSellpy袋が無料で送られてきたので(Sellpy袋は19クローナ(約250円)で買うこともでき、それには袋を送ってもらうための送料と、その後服などを入れて送り返す時の送料がすべて含まれている)、着ていなかったがいつものセカンドハンドショップに寄付するにはちょっと惜しいかな、と思って処分していなかった服を何点か詰めて送ってみた。

私のSellpy袋が開封されて販売向けに登録されるのは1ヶ月以上先だが、売れると販売額の40%が私の取り分となる(500Kr以上の売値となった場合は500Krを超える分の取り分は70%で、またそこから10Krの広告費用が差し引かれる)。また販売しないで、そのまま寄付したい場合は緑の袋にいれると、Sellpyが提携しているMyrornaなどのセカンドハンドショップにそのまま寄付してくれる。

寄付するにはちょっと惜しいな、と思っていた洋服たちをSellpy袋に詰めて送ってみた

中古衣料のEコマースはドイツ大手のZalandやスウェーデンで人気のNa-Kdなどのブランドも参入して活況を見せており、すてきなセカンドハンド衣料のセレクトショップ(という命名でよかったかな?)がネットでも売ることも増えてきた。

買っちゃってもサーキュラー・エコノミーですぐまた売れるからと変に消費に拍車がかからない限りは、この試みはもちろんいいものだと思うのだが、背後がH&Mであることに一抹の不安を感じつつ今日の項は終了。

H&Mはセカンドハンドプラットフォームに大金投入を続ける(ダーゲンスインダストリ)

© Hiromi Blomberg 2023