こういうのを本物の取材というんだろうな。アフトンブラーデットが、すごい記事を発表していた。「あなたが”リサイクル”した服はここに捨てられる」
昨年12月にバングラディッシュにあるH&Mの工場からの排出量を分析した同紙の二人の記者のもとに、H&Mが店頭で回収している古着の多くは最貧国に送られそこで捨てられたり、燃やされたりしているとの情報が入った。年間30億着の衣服を販売するH&Mは完全なサーキュラー化を目指して変革を進めていると同社のウェブサイトには書かれている。
世界に4000店以上あるH&Mの店頭には着なくなった衣類の回収ボックスがある。H&Mはこの世界最大の取り組みで投資家たちに高く評価されており、2020年の1年だけで9400万枚のTシャツ相当数を回収した。
H&Mはテキスタイル業界のサステナブル活動で知られるI:Collectと協業して回収を行っていること、集められた古着はベルリン郊外の施設で選別を行っていると説明していた。(このアフトンブラーデットのスクープの後、同社のウェブサイトからはI:Collectとの協業を説明したページは削除された)また、再販できるものは再販すると約束しているが、そうではない衣類についてはどうなるのかの説明は、同社のウェブサイトにはない。
前置きが長くなったが、今回アフトンブラーデットの記者たちが行ったのは、この回収ボックスに位置センサー(Airtag)を縫い付けた服10着を入れ、それらの服がどこへ運ばれていくかを追跡したというもの。
今年1月下旬にストックホルム市内のセカンドハンドショップ数店から、まだ状態がよく、素材やスタイルの異なるH&Mの衣類を10着購入した記者たちは、これに位置情報を追跡できるAirtagをつけて、ストックホルム近郊の8つの異なるH&Mの店舗にある回収ボックスに入れた。衣類の中にはまだほとんど使われていない新品のようなパーカーもあった。
数日後にはすべてのボックスは回収され古着たちは移動し始める。ここで、全ての服はストックホルム南部のPostnordのターミナルに送られ、ノールショッピングにある別のPostnordのターミナルに移動した。
スウェーデン国内のアパレル店舗やセカンドハンド店で集められた古着のうち、再び国内で販売されるものはわずか10%(そんなに少ないのか!)だと言われているが、もしもAirtagをつけられた古着が一般客に販売された場合は、すぐにAirtagを外しにいくことができるように記者たちは、起きている間中、追跡画面を眺めていた。
…… そして現在。
この10着の衣類たちは様々な行方を辿ったが、ヨーロッパ内のテキスタイル廃棄施設に運び込まれたり、アフリカ、ベナンのコトヌーという街の海岸にある衣類の墓場にたどりついたりと、いずれの服も、私たちはこうなるといいなと望むような形でリサイクルされたり、アップサイクルされたような形跡はない。
バングラデッシュやベトナムで生産された服たちは、スウェーデンで販売され、その後リサイクルに出された後も延々と世界を巡る旅を続ける。記者たちがリサイクルボックスに服を投入した後、この10着の衣類たちは、これまでに合計5792キロ移動したとAirtagからのデータは伝える。
記事は本当に読み応えがあるので、スウェーデン語だけど一般公開されているようなので、よけれど見てみてください。この先多くの場所で引用されればいいなと思う。
H&Mはこの記事の内容に対し書面で回答をよせているが、これからもっと衣類回収後の処理にガバナンスを効かせることを余儀なくされることは間違いない。
アフトンブラーデットはスウェーデンの大企業への躊躇ない調査報道に長けていて、前にIKEAの記事を紹介したこともあった。
今回の記事は毎年世界中で1000億の衣類が新たに生産され、その半分が1年以内に捨てられてしまうという調査結果も引用している。もう本当に、すぐに着なくなってしまうような新しい服はいらないよね。