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ペーボさん

昨日ノーベル生理学・医学賞を受賞したスヴァンテ・ペーボさんの笑顔がとびきり素敵だったので、ペーボさんの人となりを紹介した記事を読んだら、さらにすごい人であることがわかった。

ペーボさんは、スウェーデンにやってきた難民を母に婚外子として生まれたが、その父親もノーベル賞受賞者で、問題地域だと思われていた郊外で育ったが独創的な考え方をする研究者になり、そして自身がバイセクシャルであることをオープンに語っている人であった。

第二次世界大戦終戦直前、当時ソ連の占領下にあったエストニアから逃れてきたペーボさんの母親カーリンさんは掃除婦やウェイトレスとして働きながらスウェーデン語を学び、そしてルンド大学で植物学、化学、動物学を勉強した。そこで彼女は既に結婚してた科学者のスーネ・ベリストロームと知り合い、その二人の間に生まれたのがスヴァンテ・ペーボさん。

母とストックホルム郊外で暮らし始めた後に、父親がカロリンスカ研究所の化学教授として就任したことで、父とそのもう一方の家族も同様にストックホルムに引っ越してきた。毎週土曜日になると父親が訪ねてきたが、そのことは父親のもうひとつの家族は知らなかったようだと話している。

父親とのこういった関係を特におかしなことだとも思っていなかったが、当時父親は何をしている人かと学校の授業で聞かれた際に「大学の教授だ」といったら、後で先生に呼ばれて「嘘をつかないように」といわれたと、当時の階級差別的な扱われ方に言及している。この父親は1982年に、ペーボさんと同じノーベル賞を受賞した人でもある。

ペーボさんの現在の研究は、13歳の時のある旅行がきっかけで古代エジプトに魅了されたことからつながっており、そこから古代のDNAを研究することになったという。

ペーボさんはまたかなり若い時期に、自分が男性にも女性にも同様に魅力を感じるバイセクシャルであることを自覚したことと、そこからの経験に関しても語っている。多くの人の目には社会的規範に適合しないやつだと思われていることを理解し、それで辛い思いをしたがそれが自分の中で大きな危機に至らなかったのは、母親からもらった自分を大切にする気持ち、自尊心を持つということだったと話している。この経験から自分に対してもそして他人に対しても心を開くようになったとも。

昨日の取材でまた、ネアンデルタール人にあったら「学校での成績はどうなのか? ちゃんと質問に答えることができるのか、その言語能力はどうなのか」聞いて確かめたいといっていたペーボさん。上の記事の元ネタになっている、ペーボさんが自身の半生について語っている2014年のラジオ番組はこちらのリンクから聞くことができます。

sverigesradio.se

ペーボの人となり、そして「ネアンデルタール人に出会ったら聞いてみたいこと」(ダーゲンスニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023