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隣人と話さなければいけない集合住宅

ヘルシンボリに高齢者と若者が一緒に住むという成功したプロジェクトがあるのは知っていたが、この集合住宅への入居の条件として「隣人と週に2時間以上話すこと」が明記されているのは知らなかった。

「Sällbo」はヘルシンボリ市の社会統合プロジェクトの一環で、ここではスウェーデンに一人で逃げてきた難民の子どもたちと、普通の若者、そしてそれまでは一人住まいだった高齢者が一緒に住んでいる。もともとは高齢者向け住宅に改装をすすめる予定だった建物があり、それが2015年の難民危機の際に急遽、同伴者のいない子どもの難民むけの住まいとして使うことを余儀なくされた。そしてその後3年間は、98人の子どもの難民向け住居として機能した。子どもたちは成人していったが、この人たちも住む場所は必要で、また高齢者向けの住宅も引き続き検討されていたので、これらの人たちが一緒に住むというアイディアが実現された。

今のSällboには51戸のアパートがあり、そのうち31戸は70歳以上の高齢者向け。残りの20戸の半分は新しく来た難民、後の半分は18歳から25歳までの若者が住んでいる。住居はそれぞれ2ルームの個別の空間だが、共有のキッチンとリビングやエクササイズ用の空間やアーティストスタジオ、ゲームやライブラリーなどがあり、いつもSällboではさまざまなアクティビティが行われている。また一人で逃げてきた難民の子どもが高校を卒業した時に一緒に祝ったり、問題の種となる共用洗濯室の掃除問題を、クリスマスの催しの一環として劇にして笑い飛ばしたり、というような出来事もある。

2019年の11月から実験的に薦められていたこのSällboは今年恒久化されることが決まり、これまでの時間でお互いのことをすっかり知るようになった住民たちは、これからも一緒に暮らしていくことになった。入居に際してはヘルシンボリの住宅供給公社が希望者に入念なインタビューをして、社会全体を反映するような様々な個性の人が集まるミニチュアのコミュニティにしようとしたそうだが、引っ越してきた高齢者はそれまでの孤独感が薄れたことをオープンに話す。

Sällboへの注目は高く、スウェーデン中どころか世界中から見学者がひっきりなしにやってくるが、ヘルシンボリでは同様の住宅をこれ以上運営するのは時間がかかりすぎるので難しいと考えている。しかしここから学ぶべきことは多いし、仮に同じような建物が見つかったらまたやらない手はないとも。

スウェーデンでは60歳以上の女性の57万人、男性では33万人が一人暮らしをしており、合わせて約100万人だが、これは60歳以上人口の35%にあたる。スウェーデン医療社会評価機関(SBU)によると社会的に孤立している状態と個人で自覚している孤独は、共に死亡率の上昇と関連していることがわかっている。

私も集合住宅に住んでいるが、朝や夕方同じ時間に外出する隣人でもなければ、なかなか隣人にも会うこともないのが現実。毎週2時間隣人と話すことが決められていて、隣人と出会う場所もあるというのは、なかなか素晴らしい仕組みだなと思う。

若者と高齢者が一緒に住むアパートでは「お互いのことを何でも知っている」(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2022