「スウェーデンの法律は性別や宗教による差別をするものではなく、またスウェーデンのソーシャルサービスが子どもを誘拐することはありません」と最近のニュース番組で発言していたのは社会サービス担当大臣のカミラ・ヴァルテルソン・グローンヴァル。
なぜ大臣がテレビでこんなことをわざわざ発言しないといけないかというと、TikTokを始めとしたSNSで、スウェーデンではケースワーカーが子どもを誘拐するという偽情報が出回っっているからだ。スウェーデンの社会サービスに対するネガティブキャンペーンは以前からあったが、ここのところTikTokで勢いを増した新たな展開が続いている。ケースワーカーたちへの暴力的な傾向が顕著になり、つけられたり暴言をはかれたりする職員も後をたたない。
スウェーデンでは子どもの誘拐はしないが、子どもたちを守るための法律はある。子どもたちが緊急に保護が必要な状況で、保護者の同意が得られない場合、ソーシャルサービスは直ちに子どもを保護することができる。子どもを保護するのは、子どもの健康や発達に害を及ぼす重大なリスクがある時で、たとえば家族から暴力や虐待にあったり、子どもが自分で危険に身を晒している時にも保護されることがある。
ソーシャルサービスは必要であれば、警察に支援を要請することもできるし、また保護者は子どもの強制的保護が不服であれば、裁判に持ち込むこともできる。今のスウェーデンの社会サービスへの悪意を煽るこのネガティブキャンペーンは、このような仕組みの中で子どもを保護された親たちが、スェーデン社会への信頼を失墜させようとする極端な意見やイデオロギーと結びついてより活動的になり、組織化されていったものだと専門家は分析する。
スウェーデンに関するニュースをアラビア語で配信しているAllkompisの代表は、このようなネガティブキャンペーンの結果、本当に支援を必要とする人たちがソーシャルサービスに連絡することをためらうようになるといったリスクも指摘する。SNSの意見は過激であればあるほど拡散しやすくなるようで、TikTokでのネガティブキャンペーンの対象はソーシャルサービスからスウェーデン政治や社会そのものへと広がっている。この衝突の背後には家族の役割に関する考え方の違いもある。これ、いったいどこまでエスカレートするのだろう。
大臣「はっきりさせておきたいのですが、スウェーデンの社会サービスは子どもを誘拐したりしません」(SVT)