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IPCC報告書と、私にもできる一番有効な気候危機対策【追記あり】

スウェーデン最大の日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルの今日の朝刊第一面はこんな感じだ。

「私たちはおそらく、歴史上最も重要な岐路に立っている」

国連の気候変動に関する政府間パネルIPCCが昨日発表した10年ぶりの統合報告書は、大規模かつ迅速で恒久的な排出削減が必要なことをまとめている。アントニオ・グレーテス事務総長は、気候危機の時限爆弾は時を刻んでおり、この報告書はその爆弾を解除するためのマニュアルだと言った。

ダーゲンス・ニュヘテルは、1,5度、1.7度、2,0度の範囲内に抑えるためには気候温暖化ガスをどれくらい急激に減少させなければいけないかをインフォグラフィックスでみせているが、このグラフをみて、これなら大丈夫そうだ、私たちにもできると思える人はいないだろう。この目標を達成するには、せめて削減目標とそれを達成するための手段が政策として既に世界中で決まっていなければならないように思える。しかし実際は、気温上昇が起こっても壊滅的なことは起こらないという懐疑的な意見をふりまいている政治家も未だにいるような状態だ。

科学への信頼を貶める政治家たち | 北欧通信

ドイツのポスダム気候影響研究所のヨハン・ロックストローム所長は、このIPCCの「最新」の報告書はボトムラインとしてはとても重要なものだとしながらも、この報告書に含まれている研究は2021年10月までのもので、最前線の研究から2,3年前の状態を扱っていることに留意する必要を指摘する。報告書にはないが、非常に重要な点として、ティッピング・ポイントがこれまで考えられていたよりも早い段階で(低い気温でも)起こってしまうリスクが高まっていると言う。

以前このブログでも紹介した、これから今世紀末までの80年間にどのようなことが起こるかを10年ごとの段階別にまとめた本『奈落に落ちるまでの8段階(Åtta steg mot avgrunden)』の著者で、アフトンブラーデットの気候ジャーナリスト、ヨナタン・イェプソンは、今回の報告書は残酷で、これからの10年はとても重要で、まだできることがあったのになにもしなかったか、もしくは大きな変化を起こしたかが、歴史に刻まれる10年だとまとめている。

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私たちが目の前にしているこれからの10年は、まだなにかができる時代で、それをすぎると(ティッピング・ポイントを越してしまうと)流れを変えることは難しい。

報告書は世界人口のうち最も裕福な10%の人々が排出量の34%〜45%を占めるのに、より貧しい国や人々が危機の影響を最も強く受けていることも再度まとめている。

私の夫は少し前から、所得と排出量の相関性は非常に強いので、気候危機対策にはみんな所得を低くするようにすればいいと言っていて、どうやら自身も実践しているようである。私も飲水は水筒でとか、肉は食べないようにしようとか、ちまちましたことを考えているだけじゃなく、所得を低く抑えることを第一の目標にすれば、後の問題はある程度自動的に解決できるのではないか。給与が不当に低く抑えられている人や、一生懸命働いても食費にも事欠く人の給与は上がらなければいけないが、生活に困らない程度の給与を得ている私たち夫婦のような場合は、所得にまつわる考え方を変えないといけないのかもしれない。

問題は、給与は高いほどよいという、これまで自分の中に埋め込まれている価値観とどう戦うかだけど、目指すには価値のある目標のように思える。

「脱成長」は自分から。

IPCC・排出量の半減まであと7年(ダーゲンス・ニュヘテル)

IPCC報告書の残酷さ・1.5度目標はもう達成できない(アフトンブラーデット) 

【追記・3月21日19時30分】

やはり、私ごときが思いつくことは浅はかである。

所得が減れば気候温暖化ガスの排出量も自動的に落ちてバンバンザイだと思ったけれど、この方法では私が払っている税金の額も減ってしまう。(そんなことは起こらないとは思うけれど)みんながみんな所得を減らして税金も減ると、様々な社会サービスが立ち行かなくなってしまう。

ふむ。もう一度『奈落に落ちるまでの8段階』に登場してもらうと、この本の結論はだいたいこういうことだった。

私たちが最悪の状況に向かっているのは間違いなく、避けがたい。私たちにできることは生産、移動、消費などあらゆる気候温暖化ガスを排出する活動をできる限り減らすことと、そしてできる限り植林をして木にガスを吸収してもらうことで、奈落に落ちるまでの時間を少しでも長く稼ぐこと、それだけだ。

それだけだとしても、次世代のためにはやらないという選択肢はない。

 

© Hiromi Blomberg 2023