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国旗問題

昨日の6月6日はスウェーデンのナショナルデーで、いたるところでこの国の国旗が舞った。

今の国王に続く王朝を、グスタフ・ヴァーサが1523年に確立してから今年は500年ということで、500周年が大きくフィーチャーされていたが、私たちが住んでいるこのスコーネのあたりは、その時はデンマークであり、また同時代、今のフィンランドの大半はスウェーデンの領地だった。

今の色合いとバランスの国旗が制定されたのは1982年と結構最近で、縦横の比率は16x10で、それぞれ、5-2-9と4-2-4の割合で十字が描かれている。グスタフ・ヴァーサの時代は濃い青地に王冠が黄色で3つ描かれている旗(Tre Kronor)がスウェーデンのシンボルとして使われていた。

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先週の金曜日は、高校生の卒業のお祝いにウプサラまで出掛けた。こちらの高校の卒業式は日本の成人式以上の盛大なお祝いの機会で、最近の高校生は朝のシャンパンブレックファーストから始って、卒業証書をもらって学校からクラスごとに一斉に駆け出してくるところを家族総出で、その子の小さな頃の写真を準備して迎えに行くという行事を終えると、その後はクラスごとトラックを手配して、その荷台にみんなで乗り、大ボリュームの音楽を流しながら街を巡回する。その後親戚などを呼んで家でパーティーをした後、卒業生たちはまた自分たちだけのパーティーにでかけて朝まで飲み歩く、というのが定番だと思う。

今回久しぶりに、トラックの荷台や、また別途、お父さんの運転するかっこいいスポーツカーなどに1人乗って街を巡回する卒業生たちを見ていたら、スウェーデンの国旗ではなく、自身や家族の出身国の国旗をまとっている卒業生たちがたくさんいるのに気がついた。

それがどこの国の国旗か一目で言えるほど私は国旗に詳しくないが、人気作家でポッドキャスターのアレックス・シュルマンも自身のコラムで、それらの国旗をみた時の自身の感情について書いていて、彼はトルコやエリトリアの旗があったと書いている。

この現象はスウェーデンのナショナリストや極右から激しく非難されており(炎上系の自称ジャーナリストが現場からTiktokなどでレポートしていた)、スウェーデンで教育を受けているのに、移民バックグランドの卒業生たちはなぜスウェーデンの国旗を振らないのかと怒りをあらわにする。シュルマン自身は、若者のやりたいようにさせてあげればいいと頭ではわかっていながらも、両親の出身国の大きな国旗を体にまとうなら、せめて小さなスウェーデン国旗くらい手にもってくれないか、という妙な感情が湧き上がってきたことに自分で驚いている。

出身国の国旗をまとっていた移民ルーツの卒業生たちは「他国からやってきて、自分たちの未来のためにあらゆる手をつくして戦ってきた両親やその出身地に敬意を払いたい」と話す。

私は「これ、ここまで目立つと、きっといろんな人の感情を逆なでするなー」と思いながら見ていた。高校の卒業式は今週、来週と、この後も全国各地でまだまだ続く。大きな問題や衝突など起こらず、すべての卒業生が好きなように各自の卒業を祝うことができればいいのだけれど。

図解・1523年からスウェーデンはどう変わったか(ダーゲンス・ニュヘテル)

アレックス・シュルマン・スウェーデンの国旗ではないのを見て、ちょっと傷ついてしまう自分が恥ずかしい(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023