スウェーデンのスーパーにハンドスキャナーを使ったセルフレジができてずいぶん経つ。スウェーデンではIcaが早くも2004年にパイロット店舗で導入したのが最初だが、最近はお店が提供するスキャナーではなく、スマホのアプリを使ってのスキャン方式も広がっている。
(こちらはビアンカ様が、スマホでスキャンしないで自分のセルフィーばかり撮ってしまうという、おバカな広告クリップ)
ヨーテボリ大学で小売業のありかたについて研究するファルロッタ・アーケンバックさんは、スーパーをはじめとする小売業での仕事は、デジタル技術とセルフサービスの導入により根本から変化したと言う。以前の仕事はレジを中心に回っていたが、今はテクノノロジーが中心にある。デジタルを介在して顧客と向かい合うので、スタッフは導入されている技術について事前に学ぶ必要がある。
これまで小売業は学生などの若者や、専門的な知識のない人たちが労働市場に出る際の第一歩として機能してきたが、この先スーパーの仕事には一定のトレーニングが必要になるだろうし、将来的に求められるスキルが、かなり不確実な仕事でもある。
小売業従事者労働組合は、スーパーで導入されているセルフスキャンの流れをポジティブな評価をしている。今のところは雇用が減る要因にはなっていないし、顧客との対面という社交的な側面を評価している従業員たちが多いこの業界で、レジでの顧客との接触は減ったが、店内の様々な場所と場面での顧客との接触機会は減っていないからだ。
またレジの仕事は、これまでは反復作業による手首、肩、首への負担が労働環境上の大きな問題点だったが、現在スーパーの従業員は、レジで対応したり、スキャニングアプリの使い方を顧客に説明したり、商品出しをしたり、郵便窓口を担当したりと多様性に富んだものになっている。スキャンニングが導入された当初は、時折行われる抜き打ち検査(正しくスキャンしたかどうかを店員が確認する)で、顧客が暴力的もしくは脅迫的な態度にでるのではと心配されていたが、実際はそのようなことは起きなかった。
しかし変わりつつあるスーパーでの仕事の中身については、常に健康障害や事故のリスクを評価し続けることが必要だと、スウェーデン労働環境庁の人間工学と人と技術と組織体系の専門家であるエーリン・ヴィドルンドさんは説明する。
多様性に富む仕事は身体的にはよいが、イェーブレ大学の研究では、これにより男性が店舗内フロアでの仕事中心、女性がレジ中心と、ジェンダー間で仕事内容に差がでることもわかっているので、多様性がすべての従業員に適応されるように雇用者側が注意する必要がある。また、雇用者は従業員が自信を持って任務にあたることができるよう、必要な知識やトレーニングを事前に提供することも大切だ。
そう言えば、最近久しぶりに行った国営酒店システーメットでは、レジでの支払いが、係の人がいちいち商品を手にとってスキャンさせていく方式ではなく、ベルトコンベアの上に並んだ商品がレジを流れて自動的にスキャンさせる方式に変わっていた。システーメットでは顧客の年齢確認もしなければならないので、この先もセルフスキャンはしばらくは導入されないだろうけど、これの風景を未来的というのか、なんなのか。私が受けた印象は「なんか昭和的でかわいい」だったのはなぜだろう?