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備えあれば憂いなし? 戦争に備え、大量負傷者受け入れ演習を行うスウェーデンの病院

ストックホルムの南部広域医療病院(Södersjukhuset)で、スウェーデンが戦争状態にあり、攻撃で負傷した人を一度に大量に受け入れるという想定の演習が行われた。

水曜日に行われたこの90分に渡る演習では、血糊で重症者に扮したエキストラ27人が、主にヘリコプターで救急部に運びこまれ、そのうち12人は命に関わる多量の出血を伴う傷をおっているという設定。ただし病院側は、どのような怪我をした人が、何人くらいやってくるのは知らされていなかった。負傷者は救急部の廊下にも並べられ、命に関わる状態に措置を施された後、重症者は手術室や集中治療室に送られた。

想定されていたのは、戦時下に民間人向けのシェルターが攻撃され、多くの人が負傷するが、何人の負傷者が担ぎ込まれてくるかは、わかっていないというもの。

この病院は第二次世界大戦中に建設されたもので、当時スウェーデンは中立国だったものの、戦争のリスクに対応するという機能が与えられていた。1990年代後半に、この機能は実質上なくなっていたが、今、再び総合防衛の一部として機能するように再整備が進められている。

ストックホルムの広域行政局の災害医療準備部門の責任者は、ストックホルムが防衛軍とこのような形でエキストラの患者を使って演習を行うのは初めてだと説明し、演習には警察や救急隊員も参加していると話す。

今回の演習は「Meteor 2023」と呼ばれ、南部広域病院だけでなく、ストックホルムの他の救急病院や専門医療管理チームなども参加して、一度に大量の負傷者が出るような状況に対応できるかどうかを確認するために計画された。警察の担当者は、このシェルターが攻撃されるという想定以外にも、今週のストックホルムでは新聞社で発砲事件が勃発する、学校が襲撃されるなど、各地でさまざまな想定の元で、エキストラや爆撃音、爆撃光などを使った臨場感あふれる演習があると言う。

今回の演習に参加した看護師の一人は、大量の負傷者に対応する同様の訓練に参加したのは13年前で、その時に想定されていたのは、たしか通勤電車が脱線したというものだと言い、演習には世界情勢の変化が如実に反映されていると感想をもらす。

備えあれば憂いなしなのは間違いないと思うのだけど、私たちの平和な日常は常に暴力と隣合わせであることを否が応でも意識させられ、このニュースに安心すると言うよりも、不安が高ったのは私だけだろうか? 時にやってくる自然災害に対応するだけでも大変なのに、もう本当に人による暴力はやめてくれないかと思う。そう言えばアイスランドの火山は今、どのような状況なのだろう。

ストックホルムの医療サービスは戦争に備えて訓練する(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023