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スウェーデン国防準備委員会が戦時重要企業指定制度、戦時警察の再導入を提案

スウェーデン政府が任命した国防準備委員会は、軍部、民間を問わず総合防衛力を強化する必要があるとの報告書を提出した。340ページに及ぶ報告書の中での政府への提案は多岐に渡るが、ニュースを読んでいてギョッとしたのが「戦時重要企業」や「戦時警察」の再導入という提案だ。

戦時重要企業(K企業・Krigsviktiga företag)は、国の経済的な安定と、国防全般に重要な商品やサービスの生産を確保する目的で指定されるもの。K企業制度が導入されると、これらの企業で働く社員は他の強制労働につくことはなくなる。今回の報告書は、国会に議席を持つ8つの政党のすべてが支持を表明していて、来年の秋には政府からの政策案として国会にて提出され、2025年から2030年にかけての国防に関する国会の決定に盛り込まれる予定。

報告書はもはや戦争の可能性を排除することはできず、危険は迫っているので総合防衛力をすぐにでも強化する必要があるとまとめており、さらには、NATO加盟した場合には、スウェーデン領土は同盟軍の基地や作戦の展開地としても使われ、戦争難民や負傷者の受け入れ地になる可能性にも触れ、その新たな義務に備える必要にも触れている。

その他にも、市民も含め7日以内にすべての体制を戦時体制へと移行できる準備や、ヨーロッパで3ヶ月の戦争に対応できる準備を勧めるべきだと報告書は提案している。また若者の基礎訓練の拡大や、戦時の混乱に対処する「戦時警察」の再導入、スウェーデン領土で戦闘が起こった場合、2万人から3万人の民間人の死傷者がでるという可能性に加え、NATO加盟諸国からの死傷者にも対応するための病院機能の強化や小中学校での防衛訓練の導入も提案している。

少し前に「知性があれば幸せでいるのは難しい」とキルケゴールからニーチェ、ウッディ・アレンに渡るまでの例と、最新の研究者たちの研究結果を紹介し、知的であれば状況を分析することができ、例えば気候危機に関して楽観視することは難しいのだ、という長いコラムを読んだのだけど、これだけ戦争に備えようと言っていれば、戦争を避ける努力をするではなく、ちょっとでもなにかあったらすぐ戦争に突入してしまうだろうと思ってしまう私は不幸なのか。

国防準備委員会・総合防衛の強化が必要(SVT)

スウェーデン社会全体が戦争に備えなければならない(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023