swelog ニュースで語るスウェーデン

スウェーデンの気になるニュースを毎日伝えるブログです

「戦時配備要員」の暴力性

少し前から気になってブックマークしていた記事があって、今ちゃんと読んだら今年の頭に描かれた記事だったのだけれど、内容はやはり気になるものだったので書いておこう。

スウェーデンの軍隊の要員ではないけれど、行政や自治体、そして民間企業に働いているが、戦争が起こった時に国防体制の一部として働く「戦時配備(Krigsplacering)要員」が増えているというのがその記事。

軍備要員調達庁(Pliktverket)によると、今年の頭の時点でこの戦時配備要員として登録されているのは40万4218人で、前回の集計が行われた昨年6月と比較して6万6328人増え、この半年だけで20%増加した。

MSB(危機管理庁)の民間防衛計画部門は、戦時下に必要な人材を自治体や民間企業から特定し、この人たちを戦時配備要員として配備するという仕事をしているが、この作業が本格化してきているという。この記事が書かれた時点で「最終的には今よりもかなり多くなるだろう」となっている。

具体的には救急医療や電気、水道事業の修理ができる人、医療従事者、教師、交通機関の管理者など戦争の現場で必要とされるスキルを持っている人が対象となる。多くの地方自治体(医療や公共交通を運営している)の職員が配備されているが、民間企業で働く人から多く特定されているよう。

だれが戦時配備されるかをその人に伝えるのは雇用主で、その時に従業員は拒否することができない。「戦時配備要員」といっても、ほとんどの人はいつもと同じ仕事をするだけだが、戦時下ではその仕事につく義務が生じ、その仕事を続けなくてはならなくてはならず、基本的に、転職も退職も国を離れることもできない。

この記事では「戦時配備要員」と書かれているが、これはおそらく以前にまとめたこの記事で「一般勤労義務(tjänstplikt)」となっていたのと同じものかと思う。

swelog.miraioffice.com

私が今やっている仕事では、ある日突然上司から「君は戦時配備要員となったらからよろしく」と言われるようなことはまずないけど、これ、配備されてしまった人は職業選択の自由とか、移動の自由とかの各種の基本的人権が剥奪されるってことではないのか。 戦争ではだれも人権とか考えていないからそれも当然? 戦争であれば個々人の人権などどうでもよいのだというこの暴力性には、いつまでたっても唖然とするなぁ。

ホッブス、って突然思い出したけど、ええっと、この人は何を言ってんだっけ?(勉強し直した方がいいかな?ホッブズ/リヴァイアサン 

そう言えば私のこの疑問はまだ解明していないままだった……

swelog.miraioffice.com

戦時配備要員が急増(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023