swelog ニュースで語るスウェーデン

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戦争に備える北極圏での裸の訓練と、デジタル化されるヴァーサ博物館

私は何を見せられていて、何を考えなくてはならないのか、を考える。

1つ目のニュースは北極圏のルレオにある空軍の基地F21航空団での徴兵された新兵への訓練の様子。マイナス10度で雪が降りしきる中、彼らはサリンなどの科学攻撃を受けた場合の除染のやり方を練習している。兵士たちは防護マスクをつけてユニフォームを脱いで裸になり、白い粉(がなんであるのかはよくわからなかった)を体にふりかけて、屋外に設置されたシャワーの順番がくるまで、寒気の中椅子に座って待っている。シャワーの水はおそらくは温かくはなさそうである。

この演習の目的は、科学攻撃を受けたあと、できるだけ早く兵隊たちを任務遂行のために活用できるようにすることだ、とこの基地の責任者であるニルソン中佐は説明する(彼らの命を救うためではないのか)。この様子をみて、兵士たちはここまで訓練しているのだなと安心する人はほとんどいないのではないか。少なくとも私は心配が増す。

もう一つのニュースは、少し前のものだが、スウェーデンの美術館や博物館が戦争に備え始めたというもの。

敵の文化遺産を破壊したり盗んだりすることは昔から戦争の一部となっていて、今もロシアはウクライナの民族的アイデンティティにとって重要な博物館や教会などを意図的に破壊し続けている。

スウェーデン政府は国家遺産委員会に戦時に対応するための計画を練るよう依頼しており、また昨年の9月には同委員会は国内の23のミュージアムと共に収蔵品を脅かす緊急事態に対処するための準備演習も行った。スウェーデンの歴史博物館には1000万点、国立博物館には70万点の所蔵品があるが、戦時に安全な秘密の場所に移動させることができるのはそのうちのごく一部となる。

その際の優先順位はスウェーデンにとって重要なものとなるべきで、理論的にはレンブラントよりカール・ラーションが優先されるべきなのだが、世界遺産としての重要性も鑑みないといけない、などなど。

沈没船が丸々展示されているヴァーサ博物館では、万が一の際にもレプリカの作成に使えるような、ヴァーサ号を、るごとデジタルドキュメント化 するプロジェクトの進行を加速させている。

こちらも方も備えあれば憂いなしだね、となるよりは、私は余計に心配になるなというニュースなんだけど。

ルレオの冬の中、徴兵兵士たちの化学兵器に対する訓練の様子(SVT)

スウェーデンのミュージアムが戦争に備えて所蔵品を守る訓練を実地(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023