生きていくのに必要なものを食べる、というシンプルな考え方からは遠く離れ、私たちの体は世界中の大企業が取り分を争う、巨大なマーケットでしかないのだろうか?
デンマークの製薬会社ノボノルディスクのCEOのもとに食品業界の重役たちから思いがけない電話がかかったきたという逸話から始まるダーゲンス・ニュヘテルの記事は、同社の食欲抑制剤ウゴービが、世界中のスナック菓子、アイスクリームやファーストフードビジネスに大きな影響を与える可能性について書かれている。ウゴービはつい先日、日本でも販売と処方が開始された。
ノボノルディスクは糖尿病治療薬オゼンピックにも、セマグルチドという腸内ホルモンを模倣した物質(GLP-1受容体)を採用して成功しているが、ウビーゴもセマグルチドを含み週に一回の注射で食欲を抑え、これまでは手術でしか達成できなかったような体重減少をもたらすことができる。この肥満治療薬がブレイクする兆しに、食品業界は神経を尖らせているという。
アメリカの市場調査では、既に家族のなかに一人でも食欲抑制剤を服用している人が少なくとも一人いる家庭では、他の家庭と比較して食品の購入量が6〜9%減少しており、スナック菓子や、ケーキ、パイ、アイスクリームの購入が減っている。その変わりにヨーグルトや魚、野菜が購入されている。
ウォルマートやファーストフード・チェーンは、甘いものが食べたいわけでも空腹でもない顧客からどのように収益を上げるかに取り組んでいる。ネスレは肥満治療薬を補完し(減量中に起こる)筋肉量の減少を防ぐ新しいお菓子の開発に取り組んでいる。また、体重が減ると膝への負担と摩擦が減り、その結果人工膝関節の製造企業は業績が下がるのではとの予測から株価を下げている。
アメリカで発売されている肥満治療薬ゼップバウンドでは、ダイエットに成功した後、治療を中止すると1年後には減量した体重の約3分の2がリバウンドするという調査結果もあり、治療は一生続けなくてはいけない可能性もある。
しかしこんな病気と診断されるほどの肥満症への薬なんて、日本とはあまり関係ないよねと思ったら、日本ではダイエットしたい人たちが自由診療で既に多く使っており、副作用で多くの問題がでていると知った。これは治療に使うものでダイエット用ではないので、くれぐれもご注意を。