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カール・フォン・リンネの銅像

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「歴史」として私が学んできたのは「事実」の話ではなくて「事実をどう評価するか」についての話だったのだな、とつくづく思う。

一連のBlack Lives Matterの流れを受けて、世界のあちこちで銅像の撤去が続いているが、スウェーデンで今、大きな運動にこそなっていないが名前があがっているのは、世界的に有名な博物学者であり「分類学の父」と呼ばれる、カール・フォン・リンネである。

最近まで使われていたスウェーデン100クローナ紙幣の肖像にもなった、動植物の情報を整理して分類表を作り生物分類を体系化した人だ。ちなみに男性を「」の記号であわらすこともリンネの発案だそう。

そのリンネは、様々な生き物を分類し続けた人だがもちろん「人」の分類も行っていて「黒人」についての記述もある。それが差別的であるということで彼の銅像を撤去せよ、という署名が今、1600名分以上集まった。18世紀を生きた彼の「”ヨーロッパ人が優れた人種であるという認識”が植民地化を肯定する土台として使用された」というのが銅像の撤去を求める理由だ。

リンネの生涯を描いた著作もあるルンド大学名誉教授のグンナー・ブローベリは、「リンネは当時”人種(ras・品種)という考え方を採用しておらず、生物として異なるもの(art・)だと考えていた」と昨日のインタビューで話している。そしてそれを階層化しその最下位にアフリカの人々を位置づけた。

ブローベリはリンネは差別主義者だと思うか、という問いに「可能性はある。世界中を(新種をもとめて)旅した彼の弟子たちの間には、奴隷制度にはっきりと反対しているものがいるが、リンネはそのようなはっきりとした見解を示していない」と答えている。

リンネは種をもとめてスウェーデン中を旅しており、彼が立ち寄った各地に銅像がある。ルンドでは大学でも学んでいて、中央図書館横の広場にも彼の銅像がある。果たしてこの銅像はどうなる?

銅像への抗議運動がスウェーデンへ。リンネの銅像への署名集まる

© Hiromi Blomberg 2023