「スウェーデン政府は嘘をついている。政府は意図的に新型コロナウイルスを撒き散らし、結果現在までに1万2千人の死者が出ている」「アンデシュ・テグネルは(犯罪者として)裁判にかけられるべきだ」。そんな陰謀論が駆け巡り、また陰謀論で世論を操作しようとする研究者やオピニオンリーダーたちの闇のフェイスブックグループの存在がラジオで報道される。
スウェーデンラジオの報道によれば、この闇のフェイスブックグループは、政府や行政への人々の信頼を失墜させることを目的とした活動をしており、またスウェーデンのイメージを損ねる目的でスウェーデンの国民は政府に洗脳されているなどと海外のメディアや外交官へ働きかけを行ったという。
そんな今ここにあるスウェーデンの闇を食い止めようとする行動を取ったのが、スウェーデンのタブロイド紙、アフトンブラーデットの政治局長アンデシュ・リンドベリだ。
アフトンブラーデットはおそらく今スウェーデンで一番アクセス数の多いニュースサイトで、2年前に私がスウェーデンのメディア状況ををまとめた時には読者数(というよりサイトアクセス者数か?)370万人となっていた。スウェーデンの人口は1000万人強である。(アフトンブラーデットに関するもう少し長い説明はこちらをどうぞ。スウェーデンの新聞とニュースサイト)
アンデシュ・リンドベリは、政策を批判することと陰謀論を撒き散らすことはまったく違うことを強調し、政策は常に批判され議論され続けるべきだが、陰謀論は人々の社会への信頼を破壊し、非常に危険であると強く警鐘をならす。
そのリンドベリが昨日の朝、陰謀論に関する署名入り記事を公開した後、9時からしばらくの間、自身が答えるチャットを開放していた。チャットはそれから2時間強の11時過ぎまで続いたが、私はリアルタイムでは追えなかったので、昨夜お風呂に入りながら読んでみた(普段はお風呂にはスマホは持ち込まないようにしているのだが、読んでると長くなりそうだったので、これで長風呂にすることにした)。
チャットはすべてに目を通すのはなかなか大変なくらいのボリュームだった。書き込んだ人はスウェーデン政府の方針に批判的、懐疑的な意見の人が多かったように感じた。その書き込みの内容は「私はこう考えている」という政策への反対意見の表明でなければ、アンデシュ・リンドベリにこの件についてはどう考えているか? という彼の意見を聞くものが多かった。
これだけたくさんの読者からの書き込みに答えるのは本当に大変だと思うが、スウェーデンではSVTのニュースサイトでも時々SVTの政治解説員がチャットで視聴者からの質問に答えているし、コロナに関しては今もSVTの新型コロナ特設ページに行けば、私たちもいつでも質問を書き込み、ほとんどの人は記者から返事をもらうことができる。
以前、SVTのサイトでスウェーデン中銀総裁とチャットできる機会があったことをこのブログでも取り上げたこともあった。
日本の新聞や他のニュースサイトでも読者のコメント欄はあるが、読者が一方的にコメントを書き込むだけで、そのメディアの記者や解説者と直接対話する機会はあまり提供されていないように思う。 一方通行の悪口や冷笑がSNSにあふれるだけでは、何かをよい方向へ変えていく原動力となることは難しい。
意見の異なる人との対話、ということを改めて考えた木曜夜の長風呂と金曜日の朝となりました。