助け合いの精神を踏みにじって、生活保護や障害者福祉向けの受給金を騙し取るケースは後をたたない。日本でも少し前に、モラルの低い障害福祉サービス事業者が増えその不正受給のケースが報道されていたようだが、スウェーデンで今問題になっているのは犯罪集団が福祉サービスでの不正受給を組織だてて行っていること。
ストックホルム近郊のソーデルテリエ・コミューンでは、5年ほど前に犯罪集団のまわりを調査していた警察から、組織だった不正が行われている可能性に関して連絡を受けた。現在ではコミューンは申請されたことが本当に正しいかの調査を専門的に行う係を立ち上げている。
具体的には税務署、雇用調整局、社会保険庁、年金庁などの関係行政機関とネットワークをつくり、疑わしき例を多角的に分析することを可能にした。スウェーデンでは行政における個人情報の管理にパーソナルナンバーが使われているが、通常は各行政機関が個別に管理している情報を、統合・俯瞰して個人の尊厳が損なわれたりしないように注意が払われている。しかし、その行政の穴(?)を逆手にとって高度な専門的な知識を持って、抜け穴を探してくるのが最近の犯罪集団による組織的な福祉不正だ。
「福祉予算が犯罪集団の銀行口座と化している」現状をなげくソーデルテリエの職員は「向こうが組織的にやってくるのなら、こちらも行政間のネットワークで立ち向かう」と断固とした決意を語る。
スウェーデンの大きなお互い様方式はこのような不正があれば成り立たない。また行政間のネットワークは度が進みすぎると超管理社会へと向かってしまう。そのバランスをどう保つが難しいが、残念ながらこの世の中から悪もなくならないだろうから、こんなイタチごっこはこの先も続いていくのだろう(ため息。ふ)