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エリクソンのスクープに見る報道機関の開示要求の強さ

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2021年元旦、ダーゲンス・ニュヘテルがスクープしたのは、郵便通信庁のファーウェイの5G技術からの締め出し決定に関して、エリクソンのCEOがスウェーデン政府にその措置を考え直すよう圧力をかけていた通信記録の詳細だ。

(ファーウェイ締め出しについてはこちら。中国にNOというスウェーデン - swelog 今日のスウェーデンのニュース

この報道で明らかになったのはエリクソンCEOのボリイェ・エクホルムとスウェーデンの通商大臣アンナ・ハルベリとの間のSMS通信の詳細で、記事によるとエクホルムはスウェーデン政府に今回の決定への介入を促し、事と次第によってはエリクソンの本社をスウェーデンから引き上げることをほのめかす、いわば脅しをかけたとされている。

スウェーデンを代表する大企業と政府の関係、また大臣と役所の権限と役割分担、さらにはEUと中国の関係など、多くの問題が複雑に関連するこの問題だが、記事の導入部分を読んで私が一番気になったのは、ダーゲンス・ニュヘテルはこのSMSの通信記録をどうやって入手したのかという点だ。

読みすすめていくと「外務省へ開示依頼をして入手したSMSの内容に間してエクホルムにインタビューしたところ」と書かれている箇所があり、ダーゲンス・ニュヘテルは、普通に(?)大臣の通信記録を開示することを要求し、外務省がその要求に応じたものであるらしい。資料の請求の仕方と開示のされ方にそれ以上の詳しい説明はないが、ダーゲンス・ニュヘテルは報道機関の当然の権利を施行したものとしてわりとすんなり説明されている。

記事の別の箇所には、行政機関は政府の方針にそって政策を実行していくが、実施に際して行政機関の裁量で決定したことに大臣が口をはさむのは違法であるとの説明もあった。

SMSのやりとりの中でエクホルムCEOは、郵便通信庁が政府から独立してこのような重大な外交問題にも関わる決定を独自で行えること疑問を呈し、ハルベリ大臣に圧力をかけるように促している。SMSでは「私にできることはやってみる」とエクホルムに答えていたハルベリは、ダーゲンス・ニュヘテルの取材には「郵便通信庁へ圧力をかけたことはない」と回答している。

中国の5G通信網の10%の市場を獲得しており、売上の99%をスウェーデン国外から得ているエリクソンが、自社の不利になるスウェーデン行政の決定に影響力をもとうと働きかけたいのは理解できる。エクホルムは、記事掲載前に行われたダーゲンス・ニュヘテルからの取材では、通商大臣とのSMSのやり取りでスウェーデンから本社を移すと脅してはいないし、中国企業の5G技術を排除する決定はEUの方針とも異なる点を指摘しただけだと答えている。

さて、最近の日本で、桜の領収書はどこにあるのだとか、赤木ファイルの存在とか、学術会議の任命問題はどうやって決定されたのかとか、そんな政治にまるわる肝心な情報がいつまでたっても明らかにならない、報道されない様子をずっと眺めてきた私はこのエリクソンの記事を読んでおそらくは普通のスウェーデン人の読者とは違うところで驚いているのだろう…… 

なぜ日本の政治家はごまかすことができ、私たちは知りたいことを知ることができないのだろうか?

SMSで明らかに・エリクソンのCEOはファーウェイを救済するよう政府に圧力をかけていた

© Hiromi Blomberg 2021