ポーランドやハンガリーなどでの国営もしくは公共放送が政権よりの偏向した報道を行っていることなどを背景として、スウェーデンの国会でしばらく議論されていたのが「公共放送は中立で偏向のない報道を行うことを、基本法と呼ばれるスウェーデンの憲法で規定する」こと。
スウェーデンでは報道の自由は憲法で規定されているものの、今回の議論は、公共放送の報道内容に偏りのないことまでを守ろうとしたものだ。
昨日、この事項に関する検討委員会での意見が一致せず、憲法での規定は見送られることが決定した。極右政党のスウェーデン民主党は以前より公共放送の廃止を訴えているほか、今回の不一致の要因になったのは、中道右派政党である穏健党が憲法での規定をよしとしなかった点にある。
穏健党は、スウェーデンには公正で自由な報道の強い伝統がある、とし、またあまりにも強力な公共放送をつくってしまうことで、民間メディアとの不均衡を懸念した。ビジネス界から支持の高い穏健党のはっきりとした意思がここにはある。
この「公共放送の中立で偏向なき報道を憲法で規定しない」という決定に対して、世界各国の報道の自由度を検証して発表している団体「国境なき記者団」のスウェーデンでの報告担当官エリック・ハルカエールは「自殺行為に近い」として強い懸念を表明している。
世界中で、ジャーナリストが自由に報道できる権利には近年さまざまな圧力がかけられてきており、それはスウェーデンにおいても例外ではない。スウェーデンの公共放送が脅威や圧力にさられていることは明らかだ、と国境なき記者団では近頃関連レポートもまとめている。
「これまでこの国ではこの考え方を尊重してきた」からといって、それを守る努力をしないと、そんなものは一瞬で変わってしまう可能性があることは歴史をみればあきらか。ここは再度国会で議論して、今回の決定がくつがえることを祈ります。
(スウェーデンの報道の基本に関してはこちらのまとめ記事もどうぞ)