ここ数日、アメリカの情勢を伝えるニュースをきっかけとして、スウェーデンの公共放送SVTの報道姿勢への批判が巻き起こっている。今回の主な批判は、嘘を嘘としてはっきりと報道しないSVTの態度、に向けられている。
特に大手日刊紙ダーゲンス・ニュヘテルの編集長ペーテル・ヴォロダルスキのSVTへの批判は激しく、昨夜のSVTのニュース番組にヴォロダルスキがゲストとして出演し、SVTの番組構成責任者と討論を行うという成り行きになった。
ヴォロダルスキの批判は、例えば、先週の日曜日の夜のSVTニュース番組Agendaが行った共和党議員へのインタビューに向けられている。このSVTの取材に答えた議員は、今回の大統領選挙は不正であり議事堂襲撃はトランプに対抗する勢力により仕組まれたものだと主張していた。
そして、SVTの司会者はこのインタビューを、不正はなかったとの裁判所の判決がでているが、それにも関わらず不正はあったという意見で間違いないか、とその議員に再度確認するところで終えてしまったが、ヴォロダルスキは、議員の意見は事実と異なっていることをSVTははっきりと伝えるべきであったと主張する。
(同様の批判はこちらの新聞でも Agenda legitimerade ren dårskap - Sydsvenskan )
討論中、一度もニコリともせずに話していたヴォロダルスキからは、報道機関が置かれている状況に重大な危機を感じていることがピリピリと伝わってくる。SVTには期待しているが、その「妙に公正な報道姿勢」は危険で、ゆえにすぐに改めるべきだという彼の強い憤りを私は感じた。
また、SVTはこの一連のアメリカからの報道においてだけでなく、極右政党のスウェーデン民主党に関する報道姿勢に関しても多方面から批判を受けている。
2014年の総選挙の時には、SVTの党首討論会の中でスウェーデン民主党党首のジミー・オーケソンをどう扱うかを熱く議論されていたことは私もまだはっきりと覚えているが、最新の調査ではスウェーデン民主党は国民の20%近くの支持を得ており、SVTがこの政党の意見を取り上げることも以前より増えたように思う。またSVTは先日スウェーデン民主党の主要党員の柔らかめのインタビュー番組も放送していた。
SVTが置かれている状況を、主要タブロイド紙のアフトンンブラーデットの政治局長のアンデシュ・リンドベリが彼のツイッターでうまくまとめていたので最後にこれを紹介しよう。
問題は、SVTが右派ポピュリストから強い批判を受けており、また視聴者調査では極右の人たちからSVTへの信頼度が低いため、その埋め合わせをしようとし始めた点にあるように思える。
スウェーデン民主党は、SVTの廃止を提案している。SVTがおかれた状況は厳しいが、昨日のヴォロダルスキとの討論に触発され、局内でもっと議論が行われ、またジャーナリストとして腹をくくる人が増えてくる、ようなことになるだろうか?(参考・守られるのか? スウェーデン公共放送の偏向なき報道 - swelog )
SVTへの批判・トランプに関する報道はまったく踏み込んだものになっていない
SVTはすっかり変わってしまったと、以前SVTやTV4でも活躍していたジャーナリスト、ヤン・シェルマンの現状分析記事へのリンクも貼っておきます。