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王様にはない自由

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国の基本となる憲法を構成する4つの法律の中に「表現の自由に関する法」を据えて、人々が自分の思ったことを自由に表現できることを大切にする国、スウェーデン。皮肉なことにこの基本があてはまらないほぼ唯一の人がスウェーデンの国王だ。民主政の現在のスウェーデンでは国王は政治からは距離をおき、政治的な発言は控えるものとなっている。

しかし現国王は、故意からなのか不注意からなのか、ちょっと政治にツッコみぎみの発言をまれに行う。昨日世界を駆け巡ったのは「スウェーデン国王がスウェーデンはコロナ対策で失敗したと発言した」というニュースだ。

世の中には王室のゴシップが好きな人たちがいて、スウェーデンの王室の話は特によくドイツで人気らしいが、今年はコロナでスウェーデンに世界の注目が集まる中、国王が現政府を批判したともとれる発言をしたというこのニュースは、ゴシップ誌だけでなく、アメリカのワシントン・ポストを始め様々なメディアが伝えた。

各メディアは国王の発言を伝えるだけではなく、スウェーデンが今またどんな悲惨な状況にあるかをもれなく伝えることを怠らなかった。世界中でこんな反響がでるということを予想していたのかどうなのか、国王の真意は彼のみぞ知るだが、あたらめて王室の人たちには私たちが普通に享受している自由がないのだな、などという思いに至った。

さて、話はすこしそれますが、昨日は「表現の自由」に関して日本からびっくりするようなニュースを聞いたので、それに関連したことをもう少し。表現の自由があるといっても、以下の発言を行うことはスウェーデンでも規則により許されていません。

  • 集団に関する増悪の主張(ヘイトスピーチ)
  • 違法な暴力の描写(児童ポルノなど)
  • 中傷
  • 違法な脅迫
  • 扇動
  • 裁判における不正(偽証のそそのかしなど)

基本は日本でも同じなはず。大手化粧品会社の会長があきらかな差別発言をすることが容認されるような国になってしまったということであれば、私もがっかりしているだけな場合じゃない。事態はとても深刻。なにか行動するべきだな、私も。

国王のコロナ対策批判が世界中のメディアで報道される

SVT解説委員が国王のコロナ対策批判について「そうとうな物議を醸し出す」

© Hiromi Blomberg 2023