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労働をめぐる歴史的な分岐点?

f:id:hiromi_blomberg:20210608125151j:plainスウェーデンの労働市場担当大臣によると「現代スウェーデンの労働市場における最大の改革」が今まさに起きようとしているらしい。この労働法改革の新法案は、スウェーデンで雇用する人される人、そのすべてにインパクトを与えるので影響を受ける人は国全体に及ぶ。しかし、その内容は?

今回の変更の目玉と言われているのが「誰をどの順番で解雇できるか」と「正規雇用に至るまでの期間の短縮」である。

スウェーデンには人員削減が決まった時には「一番最近雇用されたものから解雇していく」という、いわゆる「後入れ先出し(Sist in först ut)」という決まりがあるが、新法案がまとまると会社の規模に関わらず、雇用者側はこのルールの適応除外が受けやすくなる。会社は人員削除の際も、どの人を残したいかを決めやすくなるということだ。

また、正規雇用に関しては、これまでは短期間の契約で24ヶ月働いた人には期間限定のない正規雇用とする必要があったが、この対象期間が12ヶ月に短縮された。短期契約で職についた人には正社員への道が短くなるということになる。

(正規雇用、短期雇用といっても日本の正規・非正規雇用のように雇用条件が極端に異なるというよりは、スウェーデンでは短期契約の雇用条件は職種によりまちまちで正規雇用に近い条件のものも、かなり異なるものもあるが、一般的に長い将来にわたる雇用が保証されていないという点で、正規雇用と大きく異ると考えていいかと思う)。

法案はこの他にも従業員も教育に関する条項なども含み、全体でみると労使どちら側に有利であるとは一概にいえず、主な労働組案の中でも評価は分かれ、去年は協議が紛争していた。現在でも最有力の労働組合なども法案に難色を示している。

ウプサラ大学の雇用法に関する研究者、カロリーン・ヨハンソン准教授は、この改革で「雇用側にとって解雇することが簡単になるとは一概に言えないが、安上がりになることは間違いない」とニュースに関してコメントしている。

スウェーデン政府と一緒にこの法案を推し進めた中道右派の穏健党の担当者は「古くなった労働関連法を現代の労働市場のあり方に適合させ、それによりスウェーデンの競争力を強化する」と法案の成立を喜んでいた。

法案はこの先国会で決議され、来年の6月30日から施行される予定だ。さて、これが私たち労働者にとっても、吉と出たりもするのだろうか?(←ものすごく懐疑的です、私)。

スウェーデンの労働法に関する新法案(SVT)

専門家が解説・新しい労働法の被雇用者の影響はこうだ(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023