デンマークで突然ロックダウンが始まったときや、スウェーデンで私たちの行動が変わり始めた時に、北欧各国首相が子どもに向けた記者会見を開催したことを覚えている人も多いだろう。自分で行動を決めることができない子どもにむけて、特別なメッセージが必要だった。
今、ある程度の行動決定の自由を個々人に残したまま感染拡大をコントロールしようとしているスウェーデンでも、自由に行動できなくなってしまった人たちがいる。それが70歳以上の高齢者だ。散歩には出ることができても、家族には会えない。さらには家にやってきてくれるヘルパーさんや介護してくれている人たちからの感染を恐れ、疑心暗鬼のかたまりのようになっている人も多いだろう。
今週、スウェーデンのロベーン首相とロヴィーン副首相が高齢者と直接ビデオをつなげて調子はどうかと対話を行っている様子がダーゲンス・ニュヘテルで紹介されていた。
日本にまけない高齢者大国で一人暮らしの人も多いスウェーデン。自立した生活で自身に誇りをもって暮らしている人も多いが、孤独に苛まされる人たちもコロナ危機がやってくる前から多かった。スウェーデンにはMindという「いのちの電話」にあたるNGOがあるが、その中に高齢者向け専用ラインがある。ここでは最近は自殺を考えているという電話も増えたそうだ。
ロヴィーン副首相はこの対話の後で「一日に4人も5人も違うヘルパーの人が来て、社会とのつながりを感じられない」などの高齢者の声が強く心に残ったと紹介していた。彼女は高齢者ケアの責任は市町村などの自治体にあるとしながらも、高齢者施設やヘルパーとして働く職員たちの労働条件は改善されなければならないと話していた(今は時給で短期働くなど、雇用条件が不安定な人が多い)。
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私は最近、ご近所さんとよく話すようになったのはもちろんのこと、散歩してすれ違うだけの人たちの顔をしっかり見ることも増えた(よって簡単な挨拶をすることも増えた)。
顔をみるのは「この人は私とどれくらい距離を取りたがっているかな?」を探ろうとする意味でもあるし、逆に「必要以上に近づいてこないでね」と威嚇する意味でもある
そして、すれ違う人が高齢者の場合は「お元気そうかな?」となんとなく確認する意味でもある。こんなこと人間として本来常にやっているべきなのに、やっていなかったことをコロナに諭されているようだ。