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コロナが暴く「ニュー・パブリック・マネジメント」の危うさ

 

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 「(コロナの時代の)今、より明確になってきたのがニュー・パブリック・マネジメント(NPM・New Public Management)やジャスト・イン・タイムといった利益追求型の組織体制は、医療や福祉の場では提供側にも享受側にも機能しないという点だ」。

先日の日曜日、私の住むスコーネ地方の日刊紙トップに掲載されていた寄稿記事が目を引いた。記事を寄稿したのはルンド大学の経済学教授のマリア・スタンフォーシュだ。

ところで、ニュー・パブリック・マネジメント、NPMってなんだっけ?

”NPMとは、行政経営に、成果の追求を目指した「改革イニシアティブ(自発的に、自ら率先して改革を推進しようとする行動)」を引き出す制度設計を行いながら、民間企業で活用されている経営理念や改革手法を可能な限り適用することで、行政経営の効率性や生産性、有効性を高めようとする試み全体を総称するものである。”

日本型NPM: 評価システムが機能する行政経営をいかに実現するか? より

1990年初頭のスウェーデンが金融危機をうまく切り抜けられたのは、NPMの考え方にのっとり、当時の政府が思い切った行政の一部民営化を推し進め、また大胆に医療や福祉、教育予算を削減していった点にもあるとされている。

金融危機は乗り切ったが、民営化された行政機能の温厚は国民の一部の人しか享受できず、予算を減らされNPM主義で運営される医療や福祉の現場は疲弊している。

一般市民にとっては医療は長い順番待ちの果てにやっとだどりつく遠い存在になってしまったし、キツイ仕事に見合わないひどい労働条件で働くことを強制される看護師などは医療の現場に自分の将来を見ることができず、現場を離れる人も目立っていた(その人達が今回のコロナ危機で医療に戻ってきていることは以前も書いた。神から呼び戻された? 5000人 - swelog 今日のスウェーデンのニュース

この問題を、今のまだコロナの感染状況も落ち着きを見せない中で提議したマリア・スタンフォーシュは私の仲のよい友人だが、普段からスウェーデン女性を取り巻く経済的問題を中心に研究を続けている人だ。

男女平等が他国と比べると進んでいるとはいえ、職業間の賃金格差は明確で女性が多く働く医療や福祉、教育といった分野では給与が相対的にとても低い。そして今回、私たちはこれらの現場で働いてくれる人の仕事がいかに尊いか、こころから身にしみて理解したはずである。

ニューパブリックマネジメントはいらない。コロナの危機の中、多くの人がそう思い始めたらスウェーデンの国の形はこの先、どう変わっていくのだろう? この寄稿記事のタイトルにある通り私も「医療と福祉はコロナ危機から、強くなってよみがえる」ことを心から望まずににはいられない。 

(そのためには、もっと税金いっぱい払いましょう! とかもありそうですが😅……)

寄稿記事「医療と福祉セクターはコロナ危機から強くなって立ち直ることを望む。働くスタッフは仕事に見合った勤労条件を受け取るべきである」