スウェーデンの最北部ノルボッテン地方では労働力が圧倒的に不足している。またノルボッテンでは化石燃料を使わない、いわゆるグリーン・スチールと呼ばれる鉄鋼を生産する新工場の建設が次々と決まり、この先約1万人の新規雇用が必要となる見込みだ。
世界でも他にあまり例をみない、鉄鋼業界での3件の新規大型投資計画はノルボッテンの経済的な位置づけを大きく変える可能性を持っている。
3件の新規投資とは、まずH2Greensteel社が250億クローナ(約3200億円)を投じて建設する1500名が働く新工場の建設計画がある。この工場が稼働する暁には、さらにはその倍の雇用が工場周辺で生み出されるだろうと、ノルボッテンの雇用サービス局の担当者は話す。
雇用ブームに沸くノルボッテン地方では、今年に入ってからこれまでに2000名が新しい仕事についたが、さらに1200件の募集にはまだ人材が見つかっていない。スウェーデンの南端デンマークとの国境に位置するスコーネ地方の失業率は11%だが、最北地方の乗ノルボッテンの中心都市、キルナの失業率は5%をきっている。
ノルボッテンでのあと2つの重要な鉄鋼業界投資案件とは、SSABがパイロットプロジェクトとして進める、石炭のかわりに水素を使う「ハイブリッド(Hybrit)」の新規大型工場と、さらにはLKABも脱炭素化を進めるために新たに3000名を必要とする見込みだ。
先にふれた今必要な1200名の求人は、実は高齢化が進むノルボッテンの人口構成変化が引き起こしたものだ。今、地域を支えるサービス分野で多くの人が退職し、またこの地方では労働年齢人口が多くないため、介護などの分野で多くの人材を必要とするというのがこの地方が今抱える雇用問題だ。それに付け加える形で、この先に鉄鋼業界が必要とする新規雇用の一大ブームがやってくる。
これまでスウェーデンの最北地方の求人の話題では、シェレフテオのバッテリー企業、Northvolt(ノースボルト)の話題がよく取り上げられていた。去年の1月にこのブログでもノースボルトの求人の話を書いた時には「新規移民たちに積極的に働きかける」という戦略について触れていたが(最北のバッテリー工場の人材探し - swelog)、今回のノルボッテン(ノースボルトのあるヴェステルボッテン地方のさらに北にある)の鉄鋼業界が狙うのは、ずばり失業者の多い「スコーネ地方からの移住」だ。
コロナ禍で、国をまたいだ移動は難しくなったが、1500キロ離れているとはいえ、国内であれば今でも引っ越しは可能だ。ここは一つ、極北の地への移住を考えてみる? バッテリーに脱炭素鉄鋼、未来をつくる新しい仕事があなたを北でまっています。
グリーン・スチールが1万人の新規雇用・ノルボッテンへの移住が必要(SVT)
スウェーデンの製鉄革命、特に「ハイブリッド」に関してはこちらの記事もどうぞ。
スウェーデン、製鉄革命でCO2ゼロ挑む: 日本経済新聞