種の絶滅は、これまでは自然保護の観点から語られることが多かったが、これからは人間の健康に直結する問題となる。
スウェーデンの公共テレビ局SVTの気候危機問題解説員エリカ・ベェルストロームは、人の感染症の3分の2は他の動物からのものだと説明する。コウモリから豚へと広がったウイルスが人へうつり、世界で200万人以上が死亡。今回の新型コロナウイルスも、大きな流れはそういうことだそうだ。
未開の自然が破壊され、そこで暮らしていた多様な種が絶滅していき、また行き場のなくなった動物がこれまでは出会うことのなかった人間と交じわることで、人間に伝染る新たなウイルスが私たちの健康を脅かす。
今地球上の全動物・植物種の25%が絶滅の危機に瀕しているといわれており、例えば、中国の木材産業などの影響でこれまで多彩な種を育んできた熱帯雨林が恐ろしいほどのスピードで消滅していっている。樹木が刈り取られた後の荒廃した場所には、先進国で暮らす私たちの食卓をうるわすカカオやアボカド、パイナップルなどの巨大プランテーションができる。
OECDがこの度まとめた「生物の多様性とCovid-19への経済的対応」レポートは、この種の絶滅と私たちの健康問題のつながりを指摘し、この先は熱帯林を破壊することに高い金銭的な制約を課し、生物の多様性を守るための国際協力を強化することを目標として掲げる。しかし現実のコロナ禍では真逆のことが起こっており、2020年の上半期にはアマゾンの森林の採伐は、前年同時期比で55%も増えた。
感染症を専門とし、今ではスウェーデンではすっかり有名な専門家となったビヨン・オルセン教授は、新型コロナの次の大規模な感染症は西アフリカからくるという国連の説について解説する。また、オルセンは自身の見解として、次にやってくるのは新型インフルエンザウイルスで、これに比べれば今の新型コロナウイルスは比較にならないほどかわいいものだったということになるだろう、と話す。
インフルエンザは感染力が強力で、集団免疫がまったくない新型インフルエンザがやってくると、様々な年齢層であっという間に感染が広がる、と彼は考えている。
次のパンデミックは中国ではなく西アフリカからやってくるという説に関して、SVTの取材陣がコートジボワールの大都市アビジャンからレポートしていた。
国連によるとこれらの地区では、都市が急速に発展し、農地を求めて熱帯雨林が採伐されている。アビジャンの周辺ではジャングルの7割が採伐され、そこに住んでいた行き場のなくなったコウモリが都会の真ん中で人間と一緒に暮らすようになった。コウモリが多種のコロナウイルスを持つことは今回のパンデミックですっかり有名になったが、数年前に起こったエボラ出血熱の流行も人々がコウモリを食べるようになって始まったものだ。
さらにこのあたりではブッシュミートと呼ばれる、野生動物を捕獲し食肉として売る市場がある(エボラ出血熱の流行、浮かび上がる「ブッシュミート」の危険性:朝日新聞GLOBE+)。象や猿などの肉が世界中に売られていくときに乾燥や燻製が不十分なためにウイルスが肉と一緒に運ばれていくこともあるという。
コロナがやってきた時には、以前見たスティーブン・ソダーバーグのパンデミックを扱った映画『コンテイジョン』をすぐに思い出したが、今のところは幸いにも現実は映画よりもましだった。しかし、これは「今のところ」という修飾語つきであるのは間違いない。
そういえばソダーバーグは『コンテイジョン』の続編を作っていると小耳に挟んだが、これはどれだけ恐ろしい内容の映画になるのだろうか?