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スウェーデンの環境問題と私のエコバッグ

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スウェーデン政府はこの秋、今後の世界の資本主義の流れを変えるかもしれない大きな選択を目前にしている。その選択とは、これまでの経済至上主義の流れに留まりそのさらなる効率化を選ぶか、それとも気候危機へ対応を第一に考え、ひいてはパリ協定を遵守する道を選ぶかの選択だ。

今から2年前の2018年10月、気候危機のための学校ストライキのグレタ・トゥーンベリの存在が国内でだんだん知られはじめてきたそんな頃、スウェーデンで持ち上がったのが国内最大の燃料企業のPreem(プリーム)がスウェーデン西部の港町リセシールに所有する製油所の増築計画だ。

2018年末に一度は許可されたこの計画では、製油所が増築された暁にはその事業内容に伴って排出される気候温暖化ガスも2倍に増え、単一施設から排出されるものとしては国内最大となる見込みだった。またその影響力の大きさから、この増設計画でスウェーデンはパリ協定を守ることができないことが、ほぼ確実になる。

各方面から批判を受けたこの件は裁判に持ち込まれることになったが、その後でスウェーデン政府がPreem製油所増設計画に関する決定を行うことが、ちょうど今から一年前の2019年8月に発表された。

それからPreemは増設計画を20%縮小、また再生可能エネルギーの使用や、排出された二酸化炭素を吸収する技術を採用して温室効果ガスを当初の計画からは減らすプランを提出したが、それでも増設となれば現在のレベルよりも音節効果ガスの排出量も増えることは避けられない。

スウェーデンがパリ協定の目標を目指すなら、ここで製油所を増設することはありえない、というのが大方の気候問題研究者の見方だ。

……というニュース解説を聴きながら洗濯していたら、そのニュースは終わってしまい、その後に私のポッドキャストは、斉藤幸平さんという経済思想家の方がゲストとして出演している番組へと続いた。

大竹まこと ゴールデンラジオ!「大竹メインディッシュ」: 091814メインディッシュ(斉藤幸平) on Apple Podcasts

なんでも斉藤さんは「人新世(ひとしんせい)の『資本論』」という本を出版されたばかりで、インタビューはその内容に触れていた。すごくざっくりいうと「資本主義が環境を破壊し、コロナ禍も招いた。資本主義というシステムから脱却して次の段階へ」という内容の本なのだそうだが、この本、今このままの生活を続けていていいのか? と少しでも考えたことのある人は必読書となりそうな内容のようだ。

特に冒頭では「エコバッグやマイボトルを使って少しでも環境問題へ貢献を、といった善意はほとんど無駄で、むしろ有害」という説が展開されているそうで、今本当に必要なのは資本主義というシステムを捨てるくらいのもっと抜本的な変革だと説く。

興味のある方はともかくよければぜひ上のポッドキャストだけでも聞いてほしいのだが、あ、これ、私がいつも夫からいわれてるやつといっしょ!と納得のインタビュー内容だった。

私はゴミの分別には自信があってw、時にちゃんと分別できていない夫に文句を言ったりすると、そんなあまりインパクトのないことよりも飛行機に乗らないとかショッピングセンターに行ってチェーン店で買い物しないとか、もっとそんなことの方が大切だ、と返事が返ってくることもある。

斉藤さんのインタビューでも、日常のなかでちまちまと努力するだけで満足していまい、本当に必要な行動にでないことの方が問題だとの指摘があった。その意味で「エコバッグやマイボトルは有害」なのだそうだ。さらには本の中では私がずっと気になっている「アボカド」についても触れられているそうで、これはもう読むしかない。

(私のアボカド問題はこれです。一石二鳥の食べ物トレンド - swelog

さて、Preemの話に戻ると、この会社は、また別の意味でも今のグローバル資本主義を体現した企業でもある。現在のPreemの株主はアラブの大金持ちで、中東から運んできた重油をスウェーデンの高度な技術を使って精製した石油の大半は、またスウェーデンを離れ他のヨーロッパ各国やアメリカに輸出されていく。

たしかにPreemは今、リセシールで千人単位の人に職を提供しており、増設するとさらに採用される人も増えるのだろうが、化石燃料を使うことが前提の産業は、拡大ではなく転換を目指すべきだろうと考える方が、しっくりくる。

このPreemの件に関して政府からの方針決定がある頃だろう、来週の9月25日はグレタ・トゥーンベリの呼びかけでこれまでにない規模の大きな地球温暖化への対策を求めるデモ(といっても今はインターネット中心だけれど)も予定されている。

グレタさんら 地球温暖化への対策求め25日に世界各地でデモ | 環境 | NHKニュース

これまでと同様、若い人たちが中心のようなデモだけど、私もそろそろマイバックとマイボトルに象徴されるようなものだけで満足するのはやめないとね!

60秒で理解するリーセシルのPreem問題

気候問題研究者「スウェーデンはPreemをとるかパリ協定をとるか決める必要がある)」

© Hiromi Blomberg 2023