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スウェーデンという国のイメージが形成される時

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昨日、「相互監視と同調圧力に頼ったコロナ対策は危険」というタイトルで斎藤環さんという精神科医の方が話しているポッドキャストを聞いていたら、その中で「スウェーデンとかブラジルみたいに真面目に経済活動を抑えなかったところで広がっているみたいな見方も一応残っていますんで」と説明されている部分があった。

このポッドキャスト全体では、コロナ対策によるコロナ以外の健康への影響について話していて非常に興味深かったのだが、上に引用した部分は私の理解と明らかに違っている。

「先生、それは違います!」とスマホのこちらで声を上げたけれど、届くはずもなく。同時に、遠い国のイメージというのはこうして形成されていくのだな、と理解したくはないけれど理解しなければいけない感じであることを理解した。

(聞いたのはこちらのポッドキャストです。ぜひ。)

No.30 相互監視と同調圧力に頼ったコロナ対策は危険 by SIGHT RADIO 渋谷陽一といとうせいこうの話せばわかる!政治も社会も • A podcast on Anchor

スウェーデンは経済活動を優先させたからロックダウンをしなかったのではなく、斎藤さんが話していた、まさに社会を閉じることから生じる国民の健康への影響を重く見たからこその対策であったことは、先週の金曜日に大手新聞ダーゲンス・ニュヘテルに掲載された公衆衛生庁のアンデシュ・テグネルへの長いインタビューの中でも繰り返し述べられている。

Anders Tegnell: Ländernas öppnande ett gigantiskt experiment när det gäller coronaviruset - DN.SE

感染症対策に特化した行政機関ではなく、スウェーデンの公衆衛生庁は国民の健康をトータルで考えた施策をとっていく機関だ。ロックダウンは感染症拡大抑制効果そのものは疑問視されていたし、公衆衛生庁は学校を閉鎖したり隔離された生活からの身体的、精神的な影響を回避する目的で、また感染はコントロールすることはできてもゼロにはできないという、ある意味冷めた見方で対策を実施してきた。

ということを、スウェーデンの中で話を聞いてきた人の多くは理解していると思うし、支持もしている。でもこんな遠い小さな国のやり方をここまで報道したり理解することは難しく、なにしろ「経済を優先させて感染が広がった」という説明は理解しやすい。

私だって、ここでスウェーデンと同列で取り上げられていたブラジルが実際どういう方針で動いていたかなどについては、国として方針なんてあったのだろうか?、という程度の理解しかしていないから、同じようなものである。

問題は、スウェーデンにこの先どういうイメージが定着していくのか? ということだろう。国民には支持されていても、例えばスウェーデンへのインバウンドの観光関連事業者団体は、スウェーデンへの観光客がこの先も減るのではないかと強い懸念を既に表明している。

スウェーデンへのイメージといえば、私も引っ越してくる前にスウェーデンのこと調べたら「フリーセックスの国」というのがよく出てきたけど、スウェーデンに来てみるとどこでそのイメージはつくられたのか? と思ってしまうくらい、そのイメージと実際は違っていた。

それによる私の生活への影響はなかったけど、今作られつつあるスウェーデンの新しいイメージによる観光業界への影響と同じような感じで、その当時も「フリーセックスの国」で多くの影響を被った業界があったのかもしれない? あったとしたらどんな影響だったのかもよくわからないですけど……

各国の渡航規制の影響で、スウェーデンの観光業界は毎日これだけの売上を喪失

© Hiromi Blomberg 2023