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発砲事件統計ニュースの見出しと内容

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2020年、スウェーデンでの発砲事件は新たな記録的レベルに(SVTニュース)」

2020年の発砲事件数・7つのうち4つの地方で減少(ダーゲンス・ニュヘテル)」

今朝の2つのニュースサイトの別々の記事は、同じ統計数字を扱ったものだが受ける印象はずいぶん異なる。SVTのニュースは状況が悪化しているようだし、ダーゲンス・ニュヘテルの見出しでは何かが改善しているような印象を受ける。

見出しに続くサマリー部分でも、SVTのニュースは発砲による死者数もこれまでの記録に近い高レベルであったこと、さらには2011年以降でギャング団関係者以外の一般人が発砲事件に巻き込まれる事件が46件となったことを伝える。一方ダーゲンス・ニュヘテルは2020年は銃撃による負傷者が全体では減少したことを伝えている。

ダーゲンス・ニュヘテルの記事を読みすすめると、発砲事件総数は増えているが、人に向けて発砲された件数は減少しており、住宅やビルなどへ威嚇のために撃ち込まれたものが増えたと報道されている。

さらには発砲事件はストックホルムで増えており、これまで銃撃事件が多かったマルメを含む南部警察管轄地域では減少傾向が続いていることがわかる。読みすすめるとマルメでは、足を洗いたいと思っているギャング団員たちを助けることで協力を取り付けたり、ギャング団に吸い寄せられる若者に特に的を絞って各自治体の社会委員会が特別対策を実施してきたことがわかる。またマルメでは外国の警察とも協力して、今年は例えばマルメで強い勢力を持つギャング団のリーダーをドバイで逮捕することができたことも伝えている。

ともかく、こちらのダーゲンス・ニュヘテルの記事は統計数字を様々な形でみせて、また多くの関係者に取材を行い、全体の数字は悪くなっているがその数字の中身が変わっていることを伝え、効果をあげている対策を丁寧に追っている。でも記事はそのため結構長くて、単純に最後まで読む人はどれくらいいるだろうか、と思ってしまう。

でもおそらくここでは読んだ人の数は問題ではない。ここまで踏み込んだ分析と取材を行い記事として発表されていることが重要で、それが今後の政策や世論形成時に影響力を持つ人に届くことをこの記事は目指している。

SVTの「状況が悪化した!」という見出しは多くの人の目をひきつけ、話題にもなるだろう。ダーゲンス・ニュヘテルの記事はその点で見出しからして地味だし、長いし読むのに力もいるが、長い目で見るとこの記事はこれからよく読まれていきそうな気がする。ここではお伝えできないがこの記事はインフォグラフィックスもいい。(グラフを一つだけ紹介すると、下のグラフは南部地区での年ごとの死者数の推移。背後に増加するストックホルムの数字も見えている)

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思い立ってタブロイド紙のExressenの見出しを確認しにサイトにいったら、この統計数字発表に関しては今朝はまだ記事になっていなくて、代わりに(?)12月20日にショッピングセンターに買い物に行っていたロベーン首相の証拠写真が大きく掲載されていた。この国の首相は一人で普通のショッピングセンターに普通に買い物に行くんだ、という点にも改めて驚いたが、だめだよ、ロベーン。しっかりしてください!

© Hiromi Blomberg 2023