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憎悪渦巻くツイッターを離れる大司教と、市民権取得の言語テスト

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自身のツイートが悪意、憎しみ、嘘や陰謀説などを広げることに利用されているとして、スウェーデン教会のアンティエ・ヤッケレーン大司教はイースター休暇中にツイッターアカウントを閉鎖した。

もはやツイッターをコミュニケーション手段として使うことから得られるメリットは少なく、逆にツイッターを使うことで脅迫を受けたり、逆に自分のツイートが間違った目的で使われてしまうことが多くなってしまったから、と彼女は説明する。

スウェーデンのキリスト教会組織のトップである彼女は、イスラム教徒とも対話を続けているが、この行動をよしとしない人たちから悪意のある非難を受けている。また自身が女性であるということもより多くの憎しみを引き寄せてしまうようだ、と高い位置にある女性は憎まれることが多いという研究結果にも言及しつつ、大司教は説明を続ける。

ヤッケレーン大司教のスウェーデン教会はつい先日も、スウェーデン政府が検討中の、移民が国籍を取得する際のスウェーデン語のテストの必須化について批判的なコメントを表明した。

国籍取得、いわゆる市民権獲得のための言語テストは、分断を助長し、特に女性や低学歴者に影響を与える可能性があるとして、この法案に批判的な立場だ。

彼女は自身も移民の一人として、言葉を学ぶことがどんなに大切かはわかってはいるが、人々のおかれた様々な状況への理解が大切であると話す。スウェーデン教会がなぜ、このような政治的な論点に意見を表明するかのかと問われた彼女は、教会はこれまでも多くの事柄について意見表明を行ってきており、また信徒の活動を通じて世の中のためになる能力が教会にはある、と答えた。

国籍取得の際の要件としての言語テストは、デンマーク、ドイツ、オランダなどで実施されているが、一方で、そのようなテストを設けても新国民の間の言語能力が高まることは限定的だとの研究結果もある。

この法案への意見の受付は4月15日で終了し、政府はその後方針を決定。今期の国会で採択されると、2025年1月1日からこの言語テストが施行される予定だ。

現行の案では、テストは16歳から66歳までのすべての応募者に適応され、筆記と口頭の両方で実施されるが、入門の知識があれば合格するレベルとなる予定。また申請者はこのテストにかかる2000クローナとは別に簡単な社会科のテストの合格も必要となり、こちらは500クローナ程度の費用がかかる予定だ。

ヤッケレーンは、ウプサラの大聖堂の司教として選ばれまた大司教の地位につくまでは、長年私の住むルンドの大聖堂の司教を努めていて、勝手にずっと親しみを感じていた。でも彼女がドイツ生まれで、スウェーデンには勉学のためにやってきたとは知らなかった。

男女平等が進んでいるとはいえ、大組織のトップに女性がつくことは他の北欧諸国と比べると少ないスウェーデンで、ヤッケレーン大司教が活躍してくれていることの意味はとても大きいと思う。ツイッター離れて正解だと思います!

 アンティエ・ヤッケレーン大司教がツイッターを離れる理由(SVT)

教会が必須言語テスト導入案をを批判。「分断を助長し、女性に不利となる」(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023