先週の15日の木曜日、スウェーデンのリンショーピングの駅付近で白昼堂々女性が男性にナイフで刺され殺害されるという衝撃的な事件が起きた。またこの3週間で女性が被害者となる同様の殺人事件が5件も立て続けに起こっており、このような痛ましい犯罪をどう防いでいくのかという議論がスウェーデン国内で巻き起こっている。このような犯罪の多くは、関係があったり顔見知りの男性による犯行だ。
各政党がこの件に関して出したコメントの中では、例えば中道政党の中央党は、女性への暴力で有罪となる最低のレベルの引き上げ、女性の行動を監視するような行為の犯罪化、また女性への暴力取締を行う人員の増強と警察組織内で女性への暴力問題解決問題の優先順位をあげることなどを提案している。
また社会民主党のダムベリ内務大臣やキリスト教民主党党首は、刑罰をさらに厳格化することにも言及している。
しかし、女性支援団体ROKSのイェニー・ヴェステルストランド代表は、刑を重くすることよりも、より多く有罪化することの方が効果的だと話す。
彼女によると、厳罰化すればするほど有罪となる人が減る可能性がある。罰則を厳しくすることで、それは社会的に認められない行為だとの明確化にはつながるが、実際に男性による女性への暴力行為を減らすことにはつながらないだろう、という。有罪とならなければ記録に残ることもなく、さまざまな行政や社会的な監視レーダーの目から漏れてしまうからだ。
それよりも、既に罰則として存在する、足かせによる行動規制や、女性への接近禁止令や、女性への暴行に関する現行法をもっと多くの事例で適応させていくほうが実際の暴力行為を減らすことに貢献できるという。この考え方には、男性の女性への暴力問題対策に取り組む「Män för jämställdhet(平等のために行動する男たち)」のアラン・アリ代表も賛同する。
また両団体代表とも、女性向けのシェルターなど支援組織を充実していくことも大切だと強調する。
スウェーデンで犯罪、法、警察力の強化などのニュースを追っていると、すべてはできないので、「何に国家予算を使うのか問題」にぶち当たることが多い(これは医療問題でも同じだが)。
この女性への暴力の問題でいえば、厳罰化して例えば刑務所送りにする人を増やし、そのための国家予算を増やすのか、それとも女性の支援シェルターを増やしたたり、ストーカーなど悪質な、しかし殺人などの重罪には至っていない段階の行為をもっと検挙できる警察の体制を整えていくのか、という議論が交わされていくことになる。
そう言えば、このブログでも何度か紹介している『スウェーデンの小学校社会科の教科書を読む』で取り上げられていた教科書の中でも「犯罪をどう防ぐのか、また罪を犯してしまった人を社会はどう受け止めるのか?」を社会的コストとの関係で扱っていて、ちょっとびっくりしたことを思い出した。この本、また読まなければ!