ものごとはそう簡単にはすすまない。スウェーデン初の女性の首相に議会で選出されたマグダレーナ・アンデションは、その7時間後に自ら辞意を伝えることになった。
来年の総選挙まで1年近くを残し、次の選挙は新しい党首で戦うべきと、これまで社会民主党党首で2期目の首相を務めていたステファン・ルベーンが辞任の意向を伝えたのは夏休みの開けた頃。
夏の終りの首相の辞意 - swelog ここだけのスウェーデンのニュース
10月の党大会で無事党首に選出されたアンデションは、これまでも政権を一緒に担当してきた環境党、そして中央党からも首相選出への賛意をとりつけ、先週は左党とも左党の要求する予算案に関して激しい交渉を続けてきた。
そして昨日、左党がアンデションの首相選出を邪魔しないという約束をとりつけたところで、無事首相に選出されたが、彼女の最初の仕事である来年の予算案の決議で、中央党が態度を変えた。
社会民主党が左党の要求も飲んで提出した予算案を「左よりすぎる」と拒否したことから、右派の穏健党、キリスト教民主党それに極右のスウェーデン民主党が一緒にまとめた予算案が議会で多数をとることになり、それが可決されてしまった。
マグダレーナ・アンデションと一緒に組閣に関わる予定だった環境党は、右側陣営からの予算案では、ガソリン税が減税されたり、また環境党の理念の一つである人権問題で到底認めることのできないスウェーデン民主党から提出された予算案に基づいた政権運営は行えないと、連立政権からの離脱を宣言し、その後アンデションは、連立政権の土台が崩れたことで、ここままの形では政府運営はできないと、一旦は辞意を表明することになった。
予算案には賛同しなかった中央党は、アンデションを首相とすることにはこれまで通り支持すると昨夜すでに表明しており、アンデションは来週、社会民主党単一での組閣を念頭に、再度議会で首相に選出されると見られている。
今後の流れがスムーズであれば、月曜日には首相として再度選出。来週の後半には新首相として任命され新しい大臣たちと記念写真に収まることができるのではないか、というのが現時点での大方の見解だ。
今回の騒動で、株を挙げたのは環境党(党としての立ち位置を明確にしたので、ここのところガタ落ちしていた有権者からの支持が戻ってくると考えられる)、はっきりしない態度で右からも左からも批判を受けたのは中央党(どうせなら首相の選出でも右側陣営と協力し、政権交代に協力するべきだったと右からも批難の声)、そしていちばん大変な立場に立たされたのは社会民主党(これからすべての決議で各党と個別に協力をとりつけていかなければならない)だと、昨日の夜のニュースでは解説されていたが、私は一番たいへんな立場に立たされているはスウェーデンそのものでしょ、と思う。
気候問題先進国を標榜しておきながら、COP26の直後にガソリン税減税なんてがっかりだな。