昨日はジェンダー間の賃金格差の話だったが、今日は学歴による健康格差の話を。
スウェーデン政府は2018年に「2048年までに改善できる余地のある健康格差をなくす」という目標をたてたが、先日公衆衛生庁から発表されたのは、この目標を期限までに達成するのが難しくなったという見解。
去年の秋にストックホルムの富裕層が住む地区と移民が多く暮らす地区での住民の健康状態や平均寿命を比較した記事を紹介したことがあるが、今回はスウェーデン全体の住民の間でこの比較を学歴ベースで行ったものが記事になっていた。
私たちが毎日どれくらい健やかに暮らし、どれくらい長生きするかは、どのような階層の社会的集団に属しているかと密接な関係があることを公衆衛生庁の発表資料から理解できる。
この統計からは高学歴者は低学歴者と比較して、自分の健康状態を良好と評価し、運動量が多く、太りすぎておらず、心疾患による死亡率が低く、平均で6年長生きする傾向があることがわかる。
2000年と2020年を比較すると健康格差は拡大しており、この間、高学歴の男性の平均寿命は2.7年伸びたのに対して低学歴の男性の平均寿命の伸びは1.7年にとどまった。高学歴の女性の平寿命の伸びは1.9年だったが、パンデミックの影響で低学歴の女性に至っては、わずかだが平均寿命は短くなってしまった。
2048年の目標は「国全体で平等によい健康状態が保てるように社会的条件を整え、改善する余地のある健康格差を一世代以内に解消する」という考え方のもとに作られたのだが、各自が属している家族、社会的集団の中でこれを改善していくことの困難さを今回のレポートは指摘することになった。
2019年から社会担当大臣を努めているレーナ・ハレグレンは、「拡大する格差に歯止めをかけるには、より的を絞った効果的な対策と、子どもたちがより公平な条件の元で育つよう長い目で、学校、校外活動団体、民間団体や行政が一眼となって取り組む必要がある」と取材で語っているのだが、この問題が簡単には解決できそうにもないことを、私は最近みたスウェーデンの映画で実感し、とても悲観的な考え方を持つにいたった。
観たのは2018年の映画『Goliat』で、これは、違う生活を送りたいと望みながら、失業した父親が手を染めていた麻薬販売を彼が刑務所送りになった時に、母親や妹たちのために引き継がざるをえなくなった17歳の青年の話である。
この世界で一番民主主義的だといわれるスウェーデンでも、格差は世代を超えて継承され、固定化されていく。この映画今7月3日まで、SVTPlayで無料で視聴できるのでスウェーデンにお住まいの方はぜひ。