スウェーデン第2の都市、ヨーテボリの現在の食料自給率はたったの1%。残りの99%のうち、約半分がスウェーデン産の食物で、後の半分は輸入に頼っていることが昨年ヨーテボリがコンサルティング会社Swecoの循環経済の専門家を雇ってまとめた報告書でわかった。同時にヨーテボリは食料自給率を50%にできる可能性のあることも指摘された。それは地域内にこの自治体が所有する多くの休耕地があるからだ。
このヨーテボリの自給自足の可能性について書かれたダーゲンス・ニュヘテルの記事では、数年前に休耕地を入手して今はヨーテボリ地域内で最大の有機農業生産者となったAlzoubi農園を取材していた。目下一家5名がフルタイムではたらくAlzoubi家は、もともとシリアで農業を営んでいたファミリーで、シリアにいた頃飼っていた2万羽にはかなわないが、今は300羽のニワトリがいて、タマネギ、キャベツ、ズッキーニといった野菜や、ベリー類や花を育てている。
ヨーテボリがこの報告書を発注した背景には気候変動があり、その影響を受けない都市を目指すという考え方があったが、自給自足の重要性はウクライナの戦争ではるかに高まった。またヨーテボリが40%を自給食料でまかなうようになると、そこには5000人の新規雇用が生まれ、年間7万5000トンの二酸化炭素の削減と2000万クローナ(約2億6600万円)の節約に繋がると試算された。しかし、そのためには農家や産業界や下水処理場などが繋がる大掛かりなサーキュラー・エコノミーの枠組みが必要になる。それは例えばサケの養殖場は工業地帯に隣接し、そこからでる残滓をエサとして使用したり、現在ロシアから輸入している肥料ではなく、その養殖魚の糞を畑の肥料として使えるように循環させることが求められる。
ヨーテボリの自治体職員は、多くの休耕地があることは認めながら、今のスウェーデンでは農業の技術を持った人が不足していること、またEUの取り決めで学校などの公共調達でも地元産の食品を特に優遇することはできない(EU内のすべての生産者を平等に扱う必要がある)ことなどから、自給率50%への道はそんなに簡単ではないとみているが、都市での自給自足がこれからのメガトレンドであることは間違いないと話す。
この数年は環境・気候危機の観点から議論されてきた食料の自給率だが、今は安全保障の問題も加わり、これからますます注目が集まりそうである。