スウェーデンの基礎年金積立には自分でフォンドを選べるプレミア年金部分がある。
2000年から年金積立の2.5%分をプレミア年金(PPM)として、自分でフォンド(投資信託)を選択できるようになったスウェーデンの年金制度。が、大多数の人(400万人)は積極的にフォンドを選択しておらず、政府が選んだ比較的リスクの低いAP7と呼ばれているデフォルトフォンドのままだ。結局、選ばなくてよかったプレミア年金 - swelog ニュースで語るスウェーデン
上の記事は2019年に書いたものだが、今では500万人が(おそらくほとんどは積極的選択ではなく、自分のお金の投資先をAP7まかせにしてほったらかしたまま)AP7に自分の将来のお金の運用を任せている。かく言う私もAP7にお任せしたままである。
手堅い運用を続けるAP7は500万人のスウェーデン人から集めたお金で、これまでにグーグルに改善をもとめたり、時には私たちが知らない間にマリファナに投資したりとその影響力を使ったいい感じのニュースを目にしていたのだが、今回ダーゲンス・ニュヘテルのコラムニストが指摘していたのはAP7が世界最大の石油・ガス会社であるサウジアラビアのサウジアラムコに5億クローナ(約70億円)を投資していること。
サウジアラコムは世界の石油の10%を生産しており、目下他のエネルギー企業が気候問題に対応するために石油関連事業から撤退するなか事業の拡大を計画している企業だとコラムにはある。国連は昨年、サウジアラムコに融資を続ける銀行は人権侵害に加担しているリスクがあると警告したそうで、これは新たに石油の採掘を続けることがパリ協定に真っ向からぶつかる可能性を指摘したものだ。
AP7はサウジアラムコに直接投資しているわけではく、グローバルな分散投資に重点を置きインデックス投資していると説明している。しかし同時に年に2回、AP7はこの企業には投資しないというリストを公開しているが、サウジアラムコはこのリストには載っていない。アメリカのウォルマートは労働組合に対してきちんと対応していないという理由でリストアップされているし、オランダのシェルはナイジェリアでの原油流出事件に直接の責任があるということで、こちらもリストにあるというのに。サウジアラムコのやっていることは、AP7の基準にあわせて問題となるレベルに至っていないということらしい。
問題のある企業には投資を引き上げるのではなく、株を持ち続けることで影響力を発揮するというのはこれまでAP7がやってきたことだが、このダーゲンス・ニュヘテルのコラムは昨年12月にノルウェーの年金基金(KLP)がサウジアラムコをブラックリスト化したことにも言及し、AP7が投資先の見直しをしないなら、私たちがAP7以外のフォンドを選ぶべきだと問題提起している。
気候問題について真剣に考えるなら私もゴミの分別などちまちまやってないで(これはこれで大切だけれど)、多くはないが貯めてきた自分のお金の使われ方にもっと注意を払うべきであるのは明確だ。皆さまも人に預けてある自分のお金がどこに流れていっているか一回確認されてみてください。
カトリーン・キラス・マルサル「サウジアラビアの巨大石油企業に投資することに問題はないですか?」(ダーゲンス・ニュヘテル)