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極右政党党首のAIによるアラビア語スピーチに間違いがあってもOKな理由

木曜日の夕方にスウェーデン民主党は、AIを使ってアラビア語に吹き替えられたジミー・オーケソン党首のスピーチをYouTubeで公開した。内容は数週間前にスウェーデン語で行ったものと同じで、スウェーデンに適応できない人はここに来るな、そんな人はスウェーデンでは歓迎されない、というもの。

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スウェーデン民主党の広報担当者は、これは国外の多くのアラビア語話者にアプローチするもので、スウェーデンに来ることを検討している人々に、それは簡単ではないことを理解してもらうことだと説明する。

ジミー・オーケソンは以前にも、トルコからギリシャ経由でEUに入ろうとする難民の人たちに「スウェーデンはもういっぱいだから来ないで」と英語で書かれたビラを現地まで出向いて、まいたことがある。

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今回のビデオは木曜日の夕方の公開された後、24時間で約11万回再生され(今確認すると17万回になっていた)、彼の顔と唇はAIによりアラビア語に適応されているが、言葉の選び方や発音でいくつかの間違いある。アラブ人には一般的ではない用語も使われているし、突然標準的アラビア語からイラク語のような方言にも変わったりする。

ルンド大学やヨーテボリ大学の政治学者たちは、オーケソンの真の狙いは彼の政党の支持者にアピールすることで、アラビア語で強い態度でスピーチしている自分を見せることだろうと分析する。アラビア語話者に伝えるためというよりは、移民排斥を支持するスウェーデン民主党シンパへのメッセージだ。

それにしても、Google翻訳を多くの人が使うようになった時から思っているが、技術の進歩により、でたらめでクオリティの低い翻訳や吹き替えが世の中に出回るようになり、これってなんなんだろう。いや、そんなことは産業の世界でも、技術の進化で可能になったファスト・ファッションや工業化された食品の世界でもずいぶん前から当たり前のことで、それが言葉の世界にも広がってきただけか。進化により下がる世の中のクオリティ。ため息がでる。とかいいつつ、こんな文章、以前なら発表する場所もなかったわけで、私も世の中のクオリティの低下に加担しておりますな。

ジミー・オーケソンがアラビア語で話した際の言語的まちがい(ダーゲンス・ニュヘテル)

AIによりアラビア語で話すジミー・オーケソン(SVT)

政治学者解説・オーケソンのアラビア語AIスピーチはスウェーデン民主党支持者に向けられたもの(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023