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森からのスーパー素材・リグニンでつくる日焼け止め

パルプ製造過程からでる産業廃棄物を利用した「木の電池」の実用化を進めるスタートアップのことを覚えている人はいるだろうか?「セルロース」をご存知なら、これからは「リグニン」もぜひ覚えておこう!と2年前に取り上げたことも。

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「リグニン」とは
植物中にセルロースなどと結合して存在する高分子化合物。細胞壁に堆積して木質化を起こし、植物体を強固にする。木材では20〜30パーセント含まれ、パルプ製造の際の不要成分。バニリン製造・粘着剤などに利用。

ざくっと言って、木の50%がセルロースからできていて、30%ほどがリグニンでできている。そしてリグニンの利用方法についてはここ10年くらいで研究が進み、ポリウレタンフォームや、接着剤、バイオプラスティック、電池の電解液、炭素繊維などさまざまな形状で使えるようになってきた。上にリンクをあげたニュースレターの記事で書いたのはリグニンで作った、プラントベースならぬ「フォレストベース」な電池の話だったが、今回のリグニン製品はなんと日焼け止めだ。

スウェーデン王立工科大学発のスタートアップProligreenは、近年ますます注目されているバイオ素材のリグニンの新境地を開拓する。これまで工業プロセスで使用されてきた茶色で臭いのあるリグニンを、無臭化、そして薄く明るい色にして消費者向け製品に加工しやすくした。

リグニンには紫外線を吸収したり、抗酸化作用もある。現在販売されている日焼け止めの多くは健康上の問題があることが指摘されているので、Proligreenはここに大きな需要があると考えている。またリグニンの原料はおがくずなど、これまではほとんど焼却処分されてきたものであることも再度指摘しておきたい。

Proligreenは現在スウェーデンの巨大投資家ヴァレンベリや、政府のイノヴェーション庁Vinnovaからも資金援助を受け、来年に最初の顧客に製品を提供できる見込みだ。今は美容・化粧品業界が大きな関心を寄せており、見込み客が列をなしている状態なのだそう。

「リグニン」。この言葉覚えておいて損はない。

森からのスーパー素材を消費者に(ダーゲンス・インダストリ)

© Hiromi Blomberg 2023