スウェーデンの元外相で、EUの環境問題委員としても活躍したマルゴット・ヴァルストロームが先週の金曜日キエフを訪れ、戦争による広範な環境悪化に対処するための対策提言書をウクライナのゼレンスキー大統領に提示した。
2022年秋の時点で、環境への悪影響への対策を10項目にわたる和平計画のひとつに入れていたゼレンスキー大統領は、昨年夏ウクライナと支援国からのメンバーで構成される「戦争の環境影響に関するハイレベル・グループ」を発足させていた。スウェーデンのマルゴット・ヴァルストロームはその際に大統領の首席補佐官のアンドリー・イェルマクと共同議長の座につくことを依頼された。
ロシアによるウクライナ侵攻から2年が経ち、街や村の破壊行為に加え、自然環境も深刻な打撃を受けている。ヴァルストロームによると、ゼレンスキー大統領に手渡された提言書には50の提言が含まれており、そのうちの半分はウクライナ政府に、後の半分は国際社会と市民社会に宛てたもので、そのほとんどは短期間で実行可能な対策であるという。
提言書は最も緊急でかつ最大の問題はウクライナ全土に散らばる大量の地雷と不発弾だが、これを撤去するには数十年かかるだろうと指摘している。地雷の除去で爆発させた場合放出される科学物質に考慮し、さらなる環境破壊を起こさない方法を考えることが必要で、また地層の表面を削り取るような方法ではウクライナの肥沃な土壌を破壊してしまうことが指摘されている。
地雷の他にも破壊された発電所やザポリッジャ原子力発電所の問題にも提言書は触れており、政府の最高レベルで環境問題を扱う必要がありそのための副首相を任命することも提案している。そして国際社会は経済的援助や、経験と専門知識を提供しウクライナの荒廃した自然の浄化を支援することを提案する。
提言書は環境破壊の責任と法律の問題にも触れており、ウクライナの法律には重大な環境破壊行為を指す「エコサイド」の概念が含まれているが、これまでのところエコサイドは国際刑事裁判所(ICC)では扱われてきていないが、これがどうなるかも注目される……
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近過去のスウェーデンの政治で、多くの人が一度は夢想したであろう首相になってもおかしくなかった人物は少なくとも二人いて、そのうちの一人である、内政よりは外交問題に関わりつづけることを選んだマルゴット・ヴァルストローム(もう一人は殺されたアナ・リンド)。もう第一線から退いたのかと思っていたけれど、彼女がこうして活躍し続けるということは、世界に紛争や問題がてんこ盛りという証でもある。