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外見で差別される医者

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救急医療の場でも人種差別で診察を拒否

少し前に、客から人種差別を受ける薬局スタッフの話を書いたが(「警察に通報されるお客様」)、今回、全国医師会が行った大規模なアンケート調査でも、患者から差別を受けている医者も多数いるという実情が明るみにでた。

スウェーデンで生まれ、スウェーデン語を話し、スウェーデンの医師免許を取り活躍している医者でも、外見が「スウェーデン人」ではないというだけで、診察を拒否する患者に出会う。

一刻をあらそう救急の現場でもそのような診察拒否は起こり、差別された医者は傷つき、また途方に暮れる。

待たれるガイドライン

スウェーデンの職場では、上司や同僚からの差別やいじめが起こった場合にどう対応すべきかのガイドラインがある。患者から差別される医者のケースがこれほど多く集められたのは始めてだと思うが、今は個々人の医者が自分の判断に頼り、その場を乗り切っているだけだ。

「お前の手で触られるのはいやだ」と叫ぶが、早急に手当をする必要のある患者に無理にでも自分が措置を施すべきなのか?それとも、ただでさえ手が足りない緊急医療の現場で、他の同僚に代わってもらうよう要請するべきなのか?代替を要請している間に患者の様態が悪い方に変わってしまったら、その責任は誰にあるのか?

一刻を争う医療上の判断に加え、自身のアイデンティティに関わるつらい決断を同時にしなければならない。

この先医師会が制定しようとしている、患者からの差別にどう対処すべきかのガイドラインができただけでは差別は減らないだろうが、医者は自分が正しい判断をしているという自信をもって診察にあたることだけはできそうだ。

残念なことだが、差別はどこにでもあるし決してなくならない。そうであればこの社会では差別は容認されないということをはっきりさせ、差別が起こった時にどう対応するのかを決めていくことの大切さは、強調してもしすぎることはない。

自分の偏見に気づく

この間からみてもらっている私の歯医者さんはシリア人で、多分大人になってからスウェーデンに来た人らしく、スウェーデン語も私と同程度でネイティブではない。それだけに語学でも苦労して歯科医になったんだろうな、と思うと、私なんかは逆に信頼のレベルが「普通のスウェーデン人の医者」よりは上がる。

でも、これも私の一方的な外見による偏向したものの見方で、まったくよくないですね。

数百人レベルの医者が患者からの差別を証言 (SVT Nyheter)

© Hiromi Blomberg 2023