積極的な事業展開を続け格安航空会社として成長したが、今回のコロナ禍で倒産の可能性もあったノルウェージャン(またはノルウェー・エアシャトル、Norwegian)は、この度大株主の一人として中国政府を迎えることとなった。
5月20日にノルウェージャンが発表したプレスリリースによれば、ノルウェージャンの株の12.7%がBOC Aviationに買収されたが、この企業の株主を元へとたどると中国政府にぶつかる。
国家であるか民間企業であるかに関わらず、中国資本が北欧や欧州企業を買収するのは、すっかり馴染みの出来事になった。
スウェーデンのボルボ・カーズが中国のGeelyに買収されたのは早くも2010年。近年の出来事で、私たちの身近なところでは音楽ストリーミングのスポティファイやファッションのAcneジーンズ、映画館チェーンのFilmstadenにオーツ麦ミルクのOatlyといったスウェーデン企業にも中国資本が投下されてきた。
幸いなことに(?)中国のヨーロッパ企業への資本投下の勢いは去年あたりから弱まってきており、EU側でも中国資本への警戒をますます強めている。今回のノルウェージャンの件は特別な状況下で起こったが、コロナ禍は中国経済にも大きな打撃を与えており、今後中国資本による北欧企業の買収がドミノ倒しのようにおこるということはなさそうだ。
さて、私が住んでいるルンド市の高速道路の北インターの一角にはソニーの大きな黒いビルが建っている。そのインターを挟んだ向かい側に、最近ほぼ完成した姿を表してきたのがネットワークカメラ大手のアクシス・コミュニケーションズの白い新社屋で、この会社は2015年に日本のキヤノンが買収した。
ソニーは、ソニー・エリクソンからソニーになった後、ルンドの事業所の規模はずいぶん小さくなったが、それでも今もソニーのヨーロッパにおけるソフトウェアの開発拠点としては重要な地位を占めていると聞くし、アクシスの方は経営はキヤノンから独立しているものの、ルンドの本社だけでも2000人以上の人が働くルンドを代表する大きな企業に育ってきている。
車でルンドに入ってくる時に目に飛び込んでくる会社のロゴが、ソニーやアクシスではなくて、ファーウェイやアリババのものだったとしたら、私のこの街での居心地もずいぶん違ったものになっていたかもしれない。誰に感謝すればいいのかよくわからないが、とりあえず天にむかって「ありがとうございます」とつぶやいておくことにします。