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殺害脅迫を受ける官僚、悪意にさらされる科学ジャーナリスト

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普段でさえちょっと憂鬱そうなヨハン・カールソン公衆衛生庁長官の顔がさらに歪んだ写真の横に「殺害脅迫」という文字が並んでいる記事を朝一番に目にして、おもわず「ひどい」と声を上げた。

SVTの取材によると、公衆衛生庁、特にアンデシュ・テグネルやカーリン・テグマルク・ヴィーセルなど、よく記者会見にでてくる人たちへの殺害予告を含めた脅迫はひどくなる一方で、さらには脅迫が組織化されたような傾向がでてきているらしい。公衆衛生庁では一般的な警備のレベルを高めている他、特に危険にさらされている官僚には警察官による警備がつくようになった。

コロナの状況が収まっていた去年の夏にラジオのトーク番組に出演していたアンデシュ・テグネルが「自分の家族を含む殺人脅迫を受け取ることがある」と話していたが、その状況はひどくなる一方だったようだ。

スウェーデンの各行政のウェブサイトに行くと、責任者個人宛に直接メールを送ることができるようになっているが、これは公衆衛生庁でも同じ。公衆衛生庁によると、テグネルは去年の1月末からの1年で約5万通の外部からのメールを受け取っている。

寄せられるメールのほとんどは質問や提案だが、その中で悪質なものは増える一方。例えばテグネルが去年の12月の一ヶ月に受け取ったメールを分析したところ、そのうちの80通が憎悪を含む辞任要求、無能の罵り、さらに個人的な攻撃、脅迫だった。

また、スウェーデンの主要紙の科学部記者たちも、脅迫されることはないものの、悪意のあるコメント、冷笑、非難の洪水にさらされている。ダーゲンス・ニュヘテルの科学部局長のマリア・グンテルは「これまでにも気候問題を取り上げた時には、称賛する声も批判する声も両方高くなるということを経験してきたが、コロナ関連の記事はその比ではない」と話す。

先日あまりにも脅迫や非難の声が高くなりコロナに関する研究をやめてしまった医学教授の話を書いたが、学術だけではなく行政も報道も同じような危機にさらされている。グンテルも状況のひどさにジャーナリストの仕事をやめようかと考えるという。

これまでにも公人や報道機関が殺害や爆破などの脅迫にさらされることは多々あったのだろうが、これが狂信的な個人からだけではなく、SNSなどを通じて悪意が組織化されて襲ってくるというところに今日的な問題がある。

殺害脅迫で公衆衛生庁を警察が保護警備(SVT)

科学ジャーナリストがパンデミックで増えた向けられた悪意を証言(SVT)

© Hiromi Blomberg 2023