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家事代行サービスの表と裏と税金と

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スウェーデンでは、掃除などの家事代行サービスを利用した場合その料金の半額が税額控除される。2007年当時の中道右翼の前政権が①税金のがれの闇サービス業者の駆逐、②清掃などの仕事の口を増やすことによる失業者対策、などを狙って導入したものだ。

これはスウェーデンではRUT控除と呼ばれており、その仕組みは一度このブログ記事でもまとめたこともある。

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RUT控除は、導入当時から家事代行サービスを利用するような家計にゆとりにある富裕層だけ優遇する政策であるなどと批判されてきた。

そしてこの度スウェーデン国家監査院(Riksrevisionen)が、改めてRUT控除が財政や労働者市場に与えた影響を分析・評価したが、その結果はよいものではなかった。

RUT控除は、失業者対策としては国内の失業者に仕事を与える目的は達成できず、その代わり、意図するところではなかったが、この家事代行サービス業で働くためにスウェーデンにやってくる労働移民を増やしてしまう結果になった。

また財政の面では、国民全員から集めた税金を原資として控除は行われているにも関わらず、仕組みを享受しているのはやはり家計にゆとりのある世帯に限られており、不公平な仕組みになっていると指摘されている。

この報道を受け、さっそく政策導入当時の担当大臣が強い反論を出したり、家事サービス業界からは実態を反映していないとの抗議があったり、RUT控除をめぐる議論はこの先もしばらくは落ち着きそうにない。

私のような庶民の感覚では、家事代行サービスは控除があるとはいっても費用はかかるので使おうとも思わないし、さらに掃除は体を動かすよい機会なのでなるだけ自分でできればなーとも思う。

さらに失業者対策にもなっていないのなら、そのお金、崩壊しそうな医療サービスの方に使ってもらったほうが嬉しい。現時点ではRUT控除の対象となる家事サービスは拡張される予定なのだそうだが、現政権、そのあたりのバランスもよく考えてください。どうぞよろしく!

RUT控除は労働移民を増やし、数十億クローナの税金を使う結果に

© Hiromi Blomberg 2023