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そして、命を狙われようとも

スウェーデンの公共放送、SVTのCEOのハンナ・シェーネは54歳の女性だ。間もなくスウェーデンの民主主義とオープンネスを象徴するイベント、政治集会のアルメダーレンが始まる。開催地であるゴットランドのヴィスビューのあちこちで開催される様々な討論会、セミナーで、8年前のCEO就任時からこれまで、スピーカーとして中心的な役割を果たしてきたシェーネは、今年はアルメダーレンに参加しない。

昨年のアルメダーレンで有識者が刺殺されるという衝撃的な事件が起こったが、シェーネは犯人が殺しのターゲットとして作成していたリストの3番めに掲載されていたことが、その後の調査でわかったからだ。

スウェーデンではこの国のオープンな民主主義を象徴するアルメダーレンという政治集会で、子どもたちの精神衛生に関する行政施策に関わってきた有識者が白昼刃物で刺され死亡するという凶悪事件が起きていたばかりだった

人を殺す暴力が繰り返される2022年という年 - swelog

シェーネは、暴力に屈するのかとのダーゲンス・ニュヘテルの問いに、その指摘はもっともで決断するのは難しかったが、彼女が行くことでアルメダーレンでの警備体制が途方もないものになることが予想されるので、今回は行くのを見送ったと言う。

この犯人は、当時中央党党首であったアニー・ローヴへのテロ犯罪を計画していた準備罪でも有罪判決を受けており、ローヴはその後、政治家をやめた。

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警察のその後の調べで、この犯人のリストにはさらに18人のSVTのジャーナリストに関する情報が集められていたことが分かったが、そのほとんどが女性で、また多くはテレビで活躍する著名なジャーナリストたちだった。

シェーネは彼女がSVTのCEOとして働いてきたこの8年間、SVTの予算に占めるセキュリティのための費用は、この時代のジャーナリズムの重要性が増すのと歩調を合わせるように増大してきたと説明する。今はヨーロッパで戦争が起きており、SVTはスウェーデンの防衛戦略の一部である以上、その面からもこの放送局に対する脅威は増幅しているからだ。ジャーナリストの多くが日常的に脅迫や危険と隣り合わせの日常を送っているが、SVTの使命の重大性は増している。

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先の18人のジャーナリストがビデオ会議で顔を合わせた時、そのうちの1人が「この素晴らしく才能のある人たちと私は一緒に仕事をしたい」と話し、困難な状況にあるみんなの間に圧倒的な思いが広がったと、シェーネは話す。

忖度のない報道、みんなが自分の思いのために戦えるオープンな民主主義は、このようなジャーナリストや政治家やアクティビストたちの、身や時には命まで削るような活動で成り立っている。

SVTのハンナ・シェーネは殺人事件によりアルメダーレンには不参加「我々の多くは脅威と共に生きている」(ダーゲンス・ニュヘテル)

© Hiromi Blomberg 2023