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減るLGBTQI認証、のその理由

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1950年に発足し、現在7000を超える会員を誇るスウェーデンの性的マイノリティのための全国組織、RSFL

RSFLでは、性的マイノリティの立場から職場環境を見直したり性的マイノリティの人たちへの理解を高める教育プログラムを運営しており、終了した組織には「HBTQI認定証」を発行していて、現在約500の組織がHBTQI認証を受けている。

(スウェーデン語と英語の”HBTQ”と”LGBTQ”の略称の違いについてはこちらの記事をどうぞ。Moving Sweden: Topp 3 がLGBTQ映画祭で受賞! - swelog 「I」については後述)

このHBTQI認証は3年に一度教育を受けなおし取得しなおす必要があるが、ここにきて、認証の更新を行う企業もまた新しく認証獲得を申請する組織も減ってきていることがわかった。その背景にあるのは、認証獲得、更新のための教育にかなりの費用がかかってしまう点にあるようだ。

オレブロ・コミューンの子どものための精神科では、そこで働く180人にRSFL認証獲得のための教育を手配する場合、35000クローナ(約420万円)の費用がかかってしまうことから、認証取得は断念。現在は独自のHBTQI教育プラグラムを開発して職員に提供している。

エンショーピングの広域医療中核病院では、RSFLの教育をピンポイント的に受けることよりも、性的マイノリティ問題に詳しい人を職員として採用し、必要な教育や課題への取り組みを恒常的に行うことができる体制をとることにした。

このような動きに加えて、今はコロナ禍で各種職場教育の実施自体が難しくなっており、RSFLでもその影響を受けている。

RSFLの担当者は、認証申請が減ってきていることに関して、費用の問題やコロナによる影響があるのは十分理解できるが、これが社会一般の性的マイノリティ問題への関心の低下を反映したものでないことを願う、と話す。私も、これはスウェーデンの社会が成熟してきたことの現れで、その逆ではないことを願います。

さて、「HBTQ」という言葉は、先にあげた以前の記事の他にも、こちらの企業トップのカミングアウトの記事でも使ったけど、今回使用されていたのは「HBTQI」。これは? 「IはIntersexを意味する」ことはわかったけど、日本語ではどう説明されているのだろう、と思って調べてみたら、その説明をしているサイトがすぐにいくつか見つかった。

LGBTQIAPKの意味とは?わかりやすく解説。LGBTだけではない性のあり方があることを理解しよう。 | 自分らしく生きるプロジェクト

LGBTQ・LGBTQIAとは?【LGBTとの違い】 | LGBT就活・転職活動サイト「JobRainbow」

ふむふむ、とその充実した内容を読ませてもらいながら読み進むと、この2つのサイトの一方にはLGBTQ+の人への貯蓄プランを販売している金融機関が、そしてもう一方には性的マイノリティが働きやすい職場の求人情報を提供している企業がスポンサーについていることがわかった。2つめのサイトは求人広告をだしている企業にたいしてLGBTQフレンドリー度審査を行い、その点数を広告と一緒に掲載している。

一方、今日取り上げたスウェーデンのニュースに出てきていたのは、行政や地方自治体での取り組み。一部の先進的な取り組みを行っている企業が日本でも特出してきているのはもちろん歓迎すべき傾向だが、社会全体に新しい考え方や理解を浸透させていくには、やはり行政や地方自治体などが変わっていく必要がある。

今のところ自治体は、各種マイノリティである住民にどうサービスを提供していくのかに苦心していると思うが、お硬い職場といわれる行政や地方自治体の職場自体が変わり、行政への求人広告がこのJobRanbowに、LGBTQフレンドリー度指数とともに掲載されるようになってくると、日本の社会ももっとワクワクした感じになりそう! 期待してます!

HBTQI認証を受けている組織の3分の1が認証更新を取りやめ

© Hiromi Blomberg 2023